2008 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン化有機化合物を一次イオンに用いた陽子移動反応質量分析法の大気計測への適用
Project/Area Number |
20510019
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
猪俣 敏 National Institute for Environmental Studies, 大気圏環境研究領域, 主任研究員 (80270586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷本 浩志 独立行政法人国立環境研究所, アジア自然共生研究グループ, 主任研究員 (30342736)
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Keywords | 環境分析 / 環境技術 / 大気汚染 / 揮発性有機化合物 / 質量分析 |
Research Abstract |
我々のグループでは、プロトン化有機化合物(VOC_1・H^+)を一次イオンに用いるという全く新しい陽子移動反応-質量分析法の手法開発に成功した。それは、従来の陽子移動反応-質量分析法のイオン源で生成するH_3O^+と、イオン源直下で導入させる試薬ガスVOC_1と反応させ、プロトン化有機化合物(VOC_1・H^+)を生成する方法である。その下流の導入口から大気試料(VOC_2)を導入し反応させる。 H_3O^++VOC_1→VOC_1・H^++H_2O(1) VOC_1・H^++VOC_2→VOC_2・H^++H_2O(2) 反応(2)は陽子親和力(PA)がVOC1より大きいものだけ起き、小さいものには起きない。この手法は、大気中揮発性有機化合物の選択的な検出が可能であり、例えば、酢酸エチル(分子量:88、PA:836kJ/mol)と1,4-ジオキサン(分子量:88、PA:798kJ/mol)といったPAの異なる異性体を親イオンのシグナル(VOC_2・H^+、m/z89)で区別可能であることを実証した。 本研究の目的は、大気中に多種類存在する揮発性有機化合物(VOC)を選別して測定するために、プロトン化有機化合物(VOC_1・H^+)を一次イオンに用いたPTR-MS法を確立することである。そのために、適切な一次イオンVOC_1・H^+を多種類、PAが691kJ/mol(H_2OのPA)から854kJ/mol(NH_3のPAを上限とする)の間で、10kJ/mol間隔程度で見つける。また、いくつかの一次イオンに関して、試料VOCの検出の可・不可の閾値がどの程度かについてPAの異なる試料を用いて調べ、水蒸気依存性がどういう場合に起こるかについても調べる。本手法の有効性を反応実験や実大気(自動車の排気ガスなど)で実証する。 平成20年度の成果として、新規一次イオンの生成が可能なVOC_1として、ケトンでは、アセトン(PA:812kJ/mol)、2-ブタノン(PA:827kJ/mol)、3-ペンタノン(PA:837kJ/mol)、3-ヘキサノン(PA:843kJ/mol)、芳香族炭化水素では、ベンゼン(PA:750kJ/mol)、トルエン(PA:784kJ/mol)、p-キシレン(PA:794kJ/mol)、その他、アセトニトリル(PA:779kJ/mol)、メタノール(PA:754kJ/mol)、アセトアルデヒド(PA:769kJ/mol)、イソブテン(PA:802kJ/mol)、酢酸メチル(PA:822kJ/mol)、硫化ジメチル(PA:831kJ/mol)、フラン(PA:803kJ/mol)と多種類かつ異なるPAを持つものが見出した。
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