2010 Fiscal Year Annual Research Report
DNA二重鎖切断修復におけるArtemisの機能発現メカニズム
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20510057
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石合 正道 京都大学, 放射線生物研究センター, 准教授 (90298844)
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Keywords | DNA損傷 / DNA修復 / レーザーマイクロ照射法 |
Research Abstract |
本研究は、DNA二重鎖切断修復に関わるヌクレアーゼArtemisの細胞内動態解析を行うことで、Artemisの機能調節機構を明らかにすることを目的とする。 平成21年末に京大放生研に整備された共焦点蛍光顕微鏡と405nmレーザーを用い、これまで広島大学の364nmレーザーを用いた細胞内局所レーザー照射法によるArtemisの動態解析の実験を再現できる条件設定を行い、Artemisがレーザー照射によるDNA損傷局所に迅速に集積することを確認した。 昨年度までの解析で、DNA損傷部位にArtemisが集積し、その集積は高濃度のカフェイン(1mM)で阻害されることを明らかにした。カフェインはArtemisのリン酸化酵素(キナーゼ)として報告されているATM, DNA-PKの両者に対する阻害剤である。また、ヒトArtemisにはATMによるリン酸化部位配列(Ser/Thr-Gln)が12個存在し、このSer/ThrをすべてAlaに置換した変異体(12M)ではArtemisのDNA損傷部位への集積が著しく減少することを見いだした。 本年度は、Artemisの集積に重要なリン酸化部位を明らかにする目的で、12M変異体のAla置換を個別にSer/Thrに戻す変異体やリン酸化状態をミミックするAspに置換する変異体を作成し、検討した。結果として、表現型に大きな影響を与える単一の変異部位は同定されず、Artemisのリン酸化は、複数残基のリン酸化が蓄積することで効果を発揮すると思われた。 また、ATMとDNA-PKのどちらのキナーゼがArtemisのリン酸化と局所集積に重要であるかを検討する目的で、それぞれのキナーゼに特異的な阻害剤を用いて検討した。その両者の組み合わせでもカフェインでみられたほどの阻害効果はみられず、ATMとDNA-PK以外のキナーゼとして、ATRが関与する可能性が考えられた。ATRはカフェインにより阻害され、ATM等と同様にDNA損傷後Ser/Thr-Gln部位をリン酸化することが知られている。現在ATRの変異細胞であるSeckel細胞やATRに対するsiRNAを用いてArtemis-GFPの動態解析を試みている。 細胞内でのArtemisのリン酸化は、6個のリン酸化部位変異体(6M)で著減することを見いだしており、この変異体はartemis欠損DT40細胞の放射線感受性を相補しないことがわかった。現在12M発現細胞を作製中で、同様の結果を12M変異体でも予想している。
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Research Products
(7 results)