2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体の恒常性維持機構に着目したカドミウム毒性発現の分子機構解明
Project/Area Number |
20510068
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
黒須 洋 Tokyo Women's Medical University, 医学部, 講師 (40468690)
|
Keywords | 恒常性維持機構 / カドミウム |
Research Abstract |
今年度は、FGF23が担う生体の恒常性維持機構を再現できる腎近位尿細管由来の培獲細胞を用いて、FGF23によって誘導される細胞応答に対するカドミウムの曝露の影響を解明することが目的であった。 FGF23によって制御される主な生理機能は、腎臓でのリン酸再吸収の抑制と活性化型ビタミンD_3合1成の制御と考えられている。リン酸再吸収の制御において重要な役割を担う分子はリン酸・ナトリウム共輸送担体(NaPi2a)である。定量的リアルタイムPCRによる解析から、近位尿細管由来の培養細胞に対してカドミウム曝露を行うとNaPi2a mRNAの発現が抑制されることが明らかとなった。一方、ビタミンD3の代謝制御に関しても、活性化型ビタミンD_3の分解を促進する律速酵素CYP24AのmRNAの発現がカドミウム曝露により抑制されることが明らかにとなった。すなわち、FGF23によって制御される恒常性維持機構に対して、カドミウム曝露が影響を及ぼす可能性が細胞レベルにおいて示唆された。 カドミウム曝露が人体へ及ぼす影響として骨軟化症という症状が知られているが、この症状を発症させる直接の原因はカドミウムによる腎近位尿細管の機能障害と考えられている。一方、FGF23の過剰の作用により引き起こされる骨軟化症の原因の一つとして腎近位尿細管でのリン酸の再吸収の抑制(NaPi2aの作用不全)による血中リン酸濃度の上昇が知られている。カドミウム曝露によってNaPi2a mRNAの発現抑制が検出されたという結果は、カドミウム曝露による骨軟化症発症の直接の原因の1つが近位尿細管でのリン酸再吸収機構の機能不全である可能性を意味するものと考えられる。 ここまではカドミウム単独曝露の影響を評価しているが、今後の研究においてFGF23からのシグナルが誘導された状態でのカドミウムの影響を様々な手法で評価していきたいと考えている。
|