2009 Fiscal Year Annual Research Report
生体の恒常性維持機構に着目したカドミウム毒性発現の分子機構解明
Project/Area Number |
20510068
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
黒須 洋 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (40468690)
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Keywords | 恒常性維持機構 / カドミウム |
Research Abstract |
今年度は、昨年度の研究から明らかになった腎近位尿細管由来の細胞へのカドミウム単独曝露の影響を受け、この細胞に対してFGF23からのシグナルが誘導された状態でのカドミウム曝露の影響を評価するための解析を試みた。第一に、培養細胞系でのFGF23による遺伝子発現誘導に関して、その濃度依存性および経時変化を詳細に検討した。次に、本研究に使用している培養細胞が腎近位尿細管由来の細胞であるという特徴を考慮し、遺伝子発現作用が期待されるビタミンD_3に関してもFGF23と同様の検討を行った。 FGF23に関しては、刺激後1時間という早い段階で一過的なEgr-1遺伝子の発現を誘導すること、また、刺激後3時間から活性型ビタミンD_3の分解を促進する律速酵素CYP24AのmRNAの発現を増強することが明らかになった。一方で、活性型ビタミンD_3の合成を促進する律速酵素CYP27B1のmRNAの発現には大きな影響を示さなかった。さらに、これらのFGF23による遺伝子発現制御に対して低濃度のビタミンD_3の添加効果を解析したところ、ビタミンD_3はEgr-1およびCYP27B1の発現には影響を示さなかったが、CYP24AmRNAの発現には単独刺激による発現上昇に加え、FGF23との共刺激において相乗的な発現上昇を誘導することが明らかになった。この結果より、細胞膜上に存在するFGF受容体/Klothoという共受容体システムを介するFGF23によるシグナルと核内受容体を介するビタミンD_3によるシグナルが協調的に制御するビタミンD_3の恒常性維持機構が存在することが示された。 この2年間の解析から得られた結果をもとに、最終年度の研究においてFGF23によって誘導されるシグナルおよび細胞応答に対するカドミウム曝露の影響を明らかにし、生体の恒常性維持機構へのカドミウムの影響を明らかにしたいと考えている
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Research Products
(6 results)