2010 Fiscal Year Annual Research Report
生体の恒常性維持機構に着目したカドミウム毒性発現の分子機構解明
Project/Area Number |
20510068
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
黒須 洋 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (40468690)
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Keywords | 恒常性維持機構 / カドミウム |
Research Abstract |
今年度は、これまでの研究から明らかになったFGF23が担う生体の恒常性維持機構を再現できる細胞を用いて、FGF23からのシグナルが誘導された状態でのカドミウムの影響を評価するための解析を試みた。そこで培養細胞系でのFGF23による遺伝子発現誘導に関して、カドミウム曝露の濃度依存性および経時変化に関して詳細な検討を行った。加えて、本研究に使用している培養細胞は腎近位尿細管由来の細胞であることを考慮し、作用発現が期待されるビタミンD_3の作用に関しても同様の検討を行った。 FGF23刺激によって誘導される遺伝子発現変化のなかで、刺激後1時間という早い段階で一過的な発現上昇が誘導されるEgr-4遺伝子の発現はカドミウム曝露による影響を受けなかったが、FGF23刺激後3時間から誘導が認められる活性型ビタミンD_3の分解を促進する律速酵素CYP24AのmRNAの発現上昇はカドミウム曝露により、その濃度依存的に発現促進が抑制された。また、活性化型ビタミンD_3の合成を促進する律速酵素CYP27B1のmRNAの発現はカドミウム曝露によってFGF23刺激の有無にかかわらず減弱していた。さらに、これらのFGF23による遺伝子発現制御に対して低濃度のビタミンD_3の添加効果を解析したところ、昨年度の解析で明らかになったFGF23とビタミンD_3の共刺激によって誘導されるCYP24AmRNAの相乗的な発現上昇は、カドミウム曝露によりFGF23単独刺激時と同様完全に抑制された。 一連の結果は、FGF23刺激によるビタミンD_3の腎臓における恒常性維持機構がカドミウム曝露により破綻していることを示唆している。また、実際にカドミウム摂取よって発症するイタイイタイ病の原因が腎臓障害によることを考慮すると、培養細胞系で認められるビタミンD_3の恒常性維持機構の破綻が腎臓で起きることで二次的な骨代謝の異常を誘導している可能性を推測させるものである。
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Research Products
(1 results)