2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ集積構造変換で制御される有機固体発光の増幅機構設計
Project/Area Number |
20510094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
務台 俊樹 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80313112)
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Keywords | 光物性 / ナノ材料 / 超分子化学 / 有機固体発光 / ESIPT発光 / 結晶多形 |
Research Abstract |
前年度に引き続き(2'-ヒドロキシフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン(1)の誘導体を種々合成し、その固体発光特性について、置換基導入による直接的な効果(分子の電子状態変化)と分子間の効果(結晶多形および分子のコンホメーション変化)の観点から検討をおこなった。 ○アリール置換体:パラ位に電子供与性または吸引性基を有するアリール基を6-/8-位に導入した。量子収率はいずれも良好(0.2-0.4)であり、置換基の種類や位置、数によって多様な固体ESIPT発光を示した.一方これらの結晶多形は得られなかった。アリール置換は、分子の電子状態の直接的変化によって発光特性を制御する手法として有効であることが分かった。 ○ハロゲン置換体:クロロおよびブロモ体を種々合成したところ、一部を除き、結晶多形に依存する固体ESIPT発光が見られた。さらに、加熱による結晶相転移に起因する明確な発光特性変化が確認された。これらの事実は、ナノ集積構造変換が固体発光を制御する機構として有用であるという我々の提案をより一般化する成果である。 ○シアノ置換体:三種類の結晶多形が得られ、黄、橙、赤の三色の固体ESIPT発光を示した。同一分子が集合構造に依存して三種類以上の発光特性を示すという報告は、これまでにほとんど例がない。さらに三種類全ての単結晶X線結晶構造解析に成功し、結晶多形と発光特性との関連という本研究の重要な課題について第一次の検討をおこなうことが出来た。 以上の結果、置換基導入による電子状態変化と分子のコンホメーション変化とを組み合わせることで、発光色や波長シフトがより広い範囲で制御可能であることが示され、ナノ集積構造変換で制御できる有機固体発光の増幅機構を設計する指針を得る上で重要な知見を得た。
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