Research Abstract |
本研究課題では,レーザー蒸発法を用いて,常圧などの通常の条件下では相互作用しにくいカーボンと金属を,高圧の希ガス等で閉じ込め,高温を維持したまま強制的に相互作用させる。高温状態を維持した状態で,強制的に存在密度を増加させ,触媒フリーで一次元ナノ複合構造(直径50 nm以下)の形成を行うことを目的としている。平成20年度では,金属材料の選択,ナノ複合構造形成および生成物解析から実施し,その形成機構を明らかにすることを目的とした。カーボンに対する溶解度が異なるCu, Si, B, Fe, Ni, Ag, Al, Gd, Yなどの金属を対象とし,グラファイトヘそれぞれの金属を混合したものを原料にして,ナノ複合構造形成と構造制御を試みた。走査型電子顕微鏡による生成物の全体像の把握や収率の評価,透過型電子顕微鏡による生成物の微細構造の観察から検討した。その結果,CuおよびSiの場合にのみ,一次元ナノ複合構造形成が起こることがわかった。Cuの場合には,1層から3層のカーボンナノチューブがCuナノワイヤーを完全に内包した構造であった。平均外径は20nmであり,狭い分布を示した。Siの場合には,SiCナノワイヤーを内包したカーボンナノチューブ(Cuの場合に比べて多い20から30の層数)が形成されることがわかった。また,これらCuおよびSiでの一次元ナノ複合構造形成は,グラファイトヘの金属の混合量および雰囲気ガス圧に大きく依存した。高温状態での不安定な溶融体形成後,自己的な触媒作用から複合構造形成が起こることが考えられる。他の金属の場合には,金属を内包したカーボンナノカプセルとナノホーン凝集構造,多面体やナノカプセルの内包構造,うに型と呼ばれる触媒金属から生え出したような構造を示す単層カーボンナノチューブ,多層カーボンナノチューブなどの形成が見られた。
|