2008 Fiscal Year Annual Research Report
X線エネルギー可変XPSによるナノ粒子の断層解析法の開発
Project/Area Number |
20510110
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
吉川 英樹 National Institute for Materials Science, ナノ計測センター, 主幹研究員 (20354409)
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Keywords | XPS / 放射光 / エネルギー可変 / 断層解析 / EDF / 非対称パラメーター |
Research Abstract |
1.モンカルロ・シミュレーション・コードの開発 エネルギー可変XPSのナノ構造物質の測定結果を解析するために、放出深さ分布関数(EDDF)を計算可能にするモンテカルロ・シミュレーション・コードの開発を行った。具体的には、次の2点について精密なコードを組み込んだ。「(1)シミュレーションで扱うX線の偏光度として、直線偏光、円偏光、楕円偏光、非偏光を扱えるようにする。これにより汎用のX線管球のみならず全ての放射光が扱えるようになった。」「(2)偏光したX線によって励起された光電子は、X線の偏光度に依存した非対称な角度分布(いわゆる非対称パラメーター)を持つ。この偏光を考慮した非対称パラメーターを扱えるようにする。」このシミュレーションコードを用いたニッケルの角度分解光電子分光解析を行うことにより、非対称パラメーターに含まれる多極子遷移ならびに光電子の表面励起効果を定量的に評価することに成功した。 2.ナノ粒子の放射光励起・光電子分光(XPS)解析の実施 コア・シェル構造を持つ銀・ポリジアセチレン-ナノ粒子の放射光XPSならびにX線吸収スペクトルの結果を精密に解析した。本ナノ粒子は非線形光学材料として期待される材料の一つであるが、ナノ粒子を覆っている(シェル構造を取る)ジアセチレンが重合してポリジアセチレンとなる際に、銀の表面プラズマ吸収が消失してしまう不思議な現象があった。解析の結果、コアを形成している銀は、数nm以下の粒径のナノクラスターの集合体であることが分かり、表面プラズマ振動の平均自由行程がクラスター内に制限され小さくなっているため、表面プラズマ振動が不安定化し易い環境にあることが実験的に分かった。「銀コアを取り巻くアセチレンが重合して銀コア表面と相互作用を起こすことが、銀の表面プラズマ振動の平均自由行程を更に短くし表面プラズマ振動を減衰させる」とのモデルを提唱した。
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