2009 Fiscal Year Annual Research Report
社債と株式の統一的価格付けモデルの開発とそのコーポレート・ファイナンスへの応用
Project/Area Number |
20510123
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 輝好 Hokkaido University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (90360891)
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Keywords | コーポレート・ファイナンス / 金融工学 / 最適資本構成 |
Research Abstract |
本研究の目的は,コーポレート・ファイナンスに関する諸問題を意思決定問題として捉えて,実務に耐えうる定量的な指針を与えることである.そのためには,市場で観測できるデータを可能な限り利用することが望ましい.そこで本研究では,これまでの先行研究を発展させて,企業の信用力と株価とを同時に説明できるようなモデルを提案した.先行研究では,企業の市場価値をただ一つの状態変数と仮定する.しかし,本研究では,その他に観測できない隠れた状態変数がもう一つ存在することを仮定した.これは,医療統計分野で提唱された手法の応用であり,たとえば人間の健康状態を隠れた変数,そして血液検査などの数値を定期的に観測できる目に見える変数と考えるのである.企業の信用力は,通常は目に見えないが,財務諸表データが定期的に観測できる点で人体の健康と類似する.数値実験では,本提案モデルを用いると,株価は高いが信用力が低いIT企業や逆に株価は低いが信用力の高い装置産業の状態を適切に表現できることを示した.これは先行研究には無い優れた特徴である. 本研究で提案したモデルでは,企業の信用力と株価とを同時に説明できることから,逆にこれを拡張することにより市場データを用いた財務レバレッジの意思決定が可能となる.つまり,観測された株価および信用力(社債の価格)から,自社の最適な資本構成問題を解決できるのである.しかし課題もある.企業の負債には満期があり,企業の信用力(クレジットリスク)は,その満期により異なるのである.すなわち,金利に期間構造が存在するように,クレジットリスクにも期間構造が存在する.本研究は,このようなより現実的な問題を解決する上で基礎となる結果を与えた.
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Research Products
(1 results)