Research Abstract |
2010年度は500銘柄前後の株価時系列を成形して同時刻時系列間の内積から相関行列を作り固有値問題の数値解を高速に求め,ランダム行列理論による固有値スペクトルの理論式と比較して主成分を抽出するという一連の作業を自動化するプログラムを作成し,RMT-PCAと名付けて様々の市場の株式価格に適用してトレンド抽出を行う一方,RMT-PCAのアルゴリズムの最大の問題点である,理論式の適用限界と主成分分離を行う境界の設定について新たな知見を得た.従来のPlerau等によるアルゴリズムでは理論式の与える最大値λ+以上の固有値全てを主成分としたが,実データの固有値スペクトルにはλ+を2割超えた範囲にまで浸出する連続スペクトル部分があり,対応する固有ベクトル成分の業種分布の乱雑度が高いことから,主成分にならないことが分かっていたが,連続スペクトルの正体が不明なため,理論的に明快な境界の設定ができなかった。しかし機械乱数を用いて数値実験を繰り返した結果,複数の,大きさの異なる株価時系列を統一的に扱う際に価格そのままを用いず,価格の対数収益を時系列として使うことが連続スペクトル発生の原因であることを突き止めた.しかしアルゴリズムの修正の具体的な方向はまだ手探り状態である.中国からの留学生が10月より研究生として参加したのち,4月より博士課程に入学し,また広島経済大学との共同研究を始めたので研究者数が増加した.論文発表は伊国,英国,韓国,台湾における国際会議,及び情報処理学会MPS研究会,物理学会「経済物理」分科会,統数研共同研究集会「経済物理学とその周辺」,統数研共同研究「社会物理学の展望」で講演を行い,査読付ジャーナルIntelligent Information ManagementやLNAI(Springer)に論文が掲載された.
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