2011 Fiscal Year Annual Research Report
高頻度価格データを例とした非定常時系列解析手法の検討
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20510137
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
田中 美栄子 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (20257570)
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Keywords | RMT-PCA / RMT-test / 相関行列 / 固有値分布 / ランダム行列理論 / 乱数列 / 非定常時系列 / ランダム性の除去 |
Research Abstract |
2011年度は引き続き,同時刻時系列間の内積から相関行列を作り固有値問題の数値解を高速に求め,ランダム行列理論による固有値スペクトルの理論式と比較して主成分を抽出するという一連の作業を自動化するプログラムを作成し,RMT-PCAと名付けて主としてtickデータに適用すると共に,疑似乱数や物理乱数の乱数度を測定するアルゴリズムを開発し、RMT-testと名付けて数種類のデータに適用して性能チェックを行った.また乱数度の低い数列を人為的に作りその乱数度をいろいろと測定した.この過程でデータ列の対数収益をデータとした場合に特有の癖が生じることを見出し,RMT-PCAのアルゴリズムの最大の問題点である,理論式の適用限界と主成分分離を行う境界の設定について新たな知見を得た.すなわち実データの固有値スペクトルに理論最大値を2割超えた範囲にまで浸出する連続スペクトル部分があるがその正体が価格データをそのまま用いず,価格の対数収益を時系列として使うことに起因することを突き止めた.論文発表は欧州における数件の国際会議,及び情報処理学会MPS研究会,物理学会「経済物理」分科会,統数研共同研究集会「経済物理学とその周辺」での講演と,査読付ジャーナルIntelligent Information ManagementやLNAI(Springer),および情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用(TOM)への論文掲載を通じて成果を公開している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画当初は単独時系列の非定常性を扱う方法の検討を主として考えていたが、高頻度価格時系列のランダム性を取り除く有効な方法がないのが問題であった。研究開始後に、複数時系列の相関行列の固有値からランダム行列理論を用いてランダム部分を除去する手法が有効であることを知り、株価の主成分抽出に応用するばかりでなく、乱数度測定にも応用範囲を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
時系列の相関行列の固有値からランダム行列理論を用いてランダム部分を除去する手法を、株価の主成分抽出に応用するアルゴリズム(RMT-PCA)と、乱数度測定のアルゴリズム(RMT-test)の二つのプログラムを改良し、コンパクトに使いやすく作り込むことで、多様なデータに適用し易くすると共に、より大きなデータを扱えるように、「京」をはじめとする超高性能計算機を利用してデータサイズを増やせるだけ増やしてみることでその効果を実験してゆきたい。RMT-PCAの応用先である価格データを他大学や会社(例えばSYBASE,Inc.)との連携を強めて、より実践的な応用を目指したい。
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