2009 Fiscal Year Annual Research Report
経済の準静的変化と企業規模を考慮した成長率分布の研究とその応用としてのリスク管理
Project/Area Number |
20510147
|
Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
石川 温 Kanazawa Gakuin University, 経営情報学部, 教授 (90308627)
|
Keywords | 経済統計学 / 経済理論 / 危機管理 / 統計力学 / 経済物理学 |
Research Abstract |
企業の規模を表す量として資本・売上・利益などが考えられるが,そのいずれもが,ある閾値以上の高額領域で冪則に従い,それ以下の中額領域で対数正規分布に従うことが知られている。最近の研究によりの現象は,経済の平衡状態を表す詳細釣合則と企業規模による成長率分布の違いを示す非ジブラ則から理解できるようになった。企業規模など経済に重要な量を扱う際,企業規模による成長率分布の違いを考慮することは非常に重要だと考えられる。この非ジブラ則は,企業利益のように成長率分布が線形のテント型で近似される場合に確認されたものであり,利益以外の企業規模量に関して分析を進め,さらにその応用として,企業規模による成長率の違いを考慮した信用リスクの研究に取り組むのが本研究の目的である。当該年度,以下の研究を実施した。 成長率分布が両対数軸で線形テント型の場合,中額領域で企業規模が大きくなるほど正の成長確率は減少し,負の成長確率が増加する(第1非ジブラ則)。一方,成長率分布が線形より裾野が広い場合,中額領域で企業規模が大きくなるほど正も負も共に成長確率は減少することが報告されている。 独立行政法人経済産業研究所(RIETI)には、中規模以上の日本企業財務データをほぼ網羅しているデータベースが所蔵されている。そのデータベースを分析することにより、まず利益データに関して、上記の第1非ジブラ則を確認した。また売上データに関して、正の成長率分布が減少する一方で、負の成長率分布は殆ど変化しないことを確認した(第2ジブラ則)。この第2ジブラ則は、前年度に得られた解析的な議論を応用することにより表現可能であり、実データにより整合性も確認された。以上の研究により、2つの非ジブラ則が、成長率分布の形状と密接に関係していることが明らかになった。 この2つの非ジブラ則の違いの理解は,信用リスクの分析を目的とする本研究には本質的である。
|
Research Products
(16 results)