Research Abstract |
本年度は,研究計画に基づき以下のように研究を実施した. 経済活動に伴って排出される汚染物質から損害を被っている経済主体は,汚染物質を削減するために,削減費用は安いが削減量が少ない政策と,削減費用は高いが削減量は多い政策の2種類の環境政策を実施可能であるとする.経済主体が汚染物質から被る損害は,汚染物質のストック量に対して2次形式でかかるとする.この汚染物質を削減するためには,削減量とは独立に与えられている政策実施費用,汚染物質の削減量に比例した費用と,削減量に対して2次形式でかかる調整費用を考慮し分析を行った.このように,汚染物質から被る損害がストック量に対して逓増することや,汚染物質削減費用が削減量に対して逓増すること,さらに調整費用を考慮することは,より現実を反映させた研究であるといえる. リアルオプション・アプローチを用いた資源・環境政策の分析は,単一の政策についての研究がほとんどであり,本研究のように代替的な政策も考慮した研究は,これまでほとんどなされてこなかった.しかし,現実には,政策の意思決定主体は,いくつもの政策選択肢を所有しており,その中から最適な政策を選択することが可能である.このような現実に対応した政策に対する研究成果が求められている.その社会的な要求に応えようとする本研究は,実際のデータを用い,実際の資源・環境政策への示唆を明らかとすることで,我々が直面している多くの資源・環境問題への提言が可能となり,学術的な貢献ばかりではなく社会的な貢献も,大いに期待されるといえよう.
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