2011 Fiscal Year Annual Research Report
リアルオプション・アプローチによる資源・環境政策の評価モデルの開発とその応用
Project/Area Number |
20510149
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
辻村 元男 同志社大学, 商学部, 准教授 (40335328)
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Keywords | ファイナンス / リアルオプション / 資源・環境政策 |
Research Abstract |
本年度は,研究計画に基づき以下のように企業の投資プロジェクトに関する研究を実施した。 企業の投資プロジェクトとして,資本への投資について考察した。企業はリスク中立であり,資本を使い財を生産し,完全競争市場で当該財を販売している。当該財への需要は不確実であり,したがって,資本への投資から得られる将来のキャッシュフローに不確実性が存在する。このような不確実な事業環境に対応するため,企業は資本を拡張あるいは縮小することが出来る。拡張・縮小が機動的になされるような資本としては,大規模な資本ではなく比較的小規模な資本が考えられる。そのため,資本の拡張あるいは縮小の際に要する費用としては,その規模に依存した費用のみがかかる場合を想定している。拡張時は資本の購入費用がかかり,売却時には売却額が得られる。ただし,売却額は購入額よりも少ないとする。このような企業の問題は,利潤の期待現在価値を最大とするように,資本への投資戦略を決めることである。本研究では,この企業の問題を,特異確率制御問題として定式化し,変分不等式を用いて最適な投資戦略を求めた。分析の結果,資本ストックと需要の水準によって特徴付けられる最適な投資戦略が求まった。資本ストックと需要がそれぞれある水準に到達すると資本を拡張・縮小する。さらに,いくつかの重要なパラメータに関して比較静学を実施し,企業の意思決定への示唆を明らかにした。代表的な結果として,不確実性が大きくなると,資本への投資が遅れることを示した。 この分析結果を,汚染物質を吸収する装置への投資問題などの資源・環境政策の分析に応用することが期待される。
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