2010 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙からの津波監視は可能か?-人工衛星観測による津波検出とその検知力評価
Project/Area Number |
20510173
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
林 豊 気象庁気象研究所, 地震火山研究部, 主任研究官 (40370332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 賢治 気象庁気象研究所, 地震火山研究部, 主任研究官 (20359128)
蒲地 政文 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 部長 (00354548)
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Keywords | 津波 / リモートセンシング / 巨大地震 / 海面高度計 |
Research Abstract |
1.衛星海面高度計による過去の外洋津波の探索 平成22年2月にチリ中部沿岸でマグニチュードが9に近い巨大地震が発生した。世界中で十年に一度程度の頻度でしか発生しない巨大地震であるため、この地震に伴う外洋津波成分を衛星海面高度観測データから抽出する試みを優先した。人工衛星Jason-2が地震の約7時間後に通過したpass015で、衛星軌道と津波先頭波面が南米太平洋沖N5~S5゜付近で交わり、海面高度計の観測値から前サイクルとの海面高度偏差の変化量の分布を求めると、最大0.1mの二つの山を持つことが分かった。簡易な地震断層モデルと線形長波理論による津波伝播計算に矛盾しない結果であるが、回帰軌道の一サイクル間(約10日)の非地震性の海面変動と同規模の大きさであるため、これが津波による変化だとは同定できなかった。 2.衛星海面高度計の津波検知力の評価と災害情報への利用可能性の検討 1において稀な頻度の巨大地震においてさえ、明瞭な津波を海面高度観測データから抽出できなかったことは、現在の衛星海面高度計ミッション下では、津波の発生機構の解明に有効な津波検知が可能になる可能性は極めて低いことを示している。津波検知力を高められるような衛星海面高度観測の仕様を検討することが、第一に解決すべき将来の課題である。 一方で、海面高度計以外の宇宙測地技術であるGPS波浪計にも対象を拡げて、津波検知力評価と災害情報への利用可能性を検討した。昨年度までに、GPS波浪計の長周期波形で観測される第一波偏差と最大振幅について、沖合観測点から検潮所への増幅率が水深比の-1/4乗に比例することを導いた。この増幅率を適用すれば、GPS波浪計で津波第一波の山が到達する前に、対岸での津波の高さが一定以上になることを推定可能な場合があり、気象庁において津波注意報を警報に切り替える等の判断に活用しうることを示した。
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