2009 Fiscal Year Annual Research Report
シロイヌナズナ無細胞転写解析法による光依存転写機構の解析
Project/Area Number |
20510188
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
湯川 泰 Nagoya City University, 大学院・システム自然科学研究科, 准教授 (70381902)
|
Keywords | シロイヌナズナ / 転写 / 無細胞系 / 光依存転写 / MM2d細胞 / 培養細胞 / 液胞除去 / 光合成 |
Research Abstract |
植物の光合成は太陽エネルギーを使った炭酸固定を行い、食物連鎖を通して生物全体のエネルギー源を担っている。葉緑体の光合成に係わる遺伝子の多くが核に移行しており、光合成関連遺伝子の発現制御を理解するには、核における転写の仕組みを知る必要がある。本研究では、顕花植物でゲノム・ポストゲノム情報の豊富なシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来の無細胞転写解析系の開発を目指している。 前年度の実績により、シロイヌナズナのMM2d培養細胞を用い、液胞を除去する操作を経ることにより、転写装置を含む核抽出液の調製法確立に目処を付けていた。本年度はさらに詳細な条件を詰め、暗培養した細胞から転写活性の良好な核抽出液を得た。転写活性はU2 snRNA遺伝子を用いて至適化し、既存のタバコ培養細胞BY-2由来の核抽出液にも劣らなかった。α-アマニチンを使った転写阻害実験およびβグルカナーゼ遺伝子、U6 snRNA遺伝子、tRNA遺伝子の転写から、転写活性のほとんどがRNAポリメラーゼII由来であった。以上、本研究の一つ目のハードルはクリアーされた。次のハードルは、明培養により光合成能を発揮している細胞からの無細胞転写解析系の開発である。明培養により緑色になった培養細胞からの転写活性を有する核抽出液調製は困難を極めたが、結論として抽出バッファーに抗酸化剤としてアスコルビン酸を比較的多量に添加することにより実現した。この方法で調製した核抽出液は、暗培養で得られた核抽出液と同等の転写活性を示していた。 シロイヌナズナの暗培養および明培養由来の無細胞転写解析系が確立できたことにより、光依存転写制御機構をin vitroで解析する下地ができあがったといえる。このことは、これまで植物では不可能であった光依存転写制御の分子メカニズムを解明する強力なツールを得た大きな意義がある。
|