2009 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム国内での聞き取り調査によるベトナム戦争の記憶に関する研究
Project/Area Number |
20510226
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
今井 昭夫 Tokyo University of Foreign Studies, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (20203284)
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Keywords | ベトナム / ベトナム戦争 / ベトナム近現代史 / 戦争の記憶 / オーラルヒストリー |
Research Abstract |
本年度、本研究プロジェクトから直接的に生み出された成果としては2本の論考を発表した。1本目は、旧北ベトナムの西北地方在住の少数民族であるムオン族とターイ族に対し聞き取り調査した結果をまとめたものである。少数民族がどのようにベトナム戦争に参加したのかについての詳しい研究はこれまでになく、少数民族が戦争を通してベトナム「国民化」したさまを描いた本論文は稀少なものであると自負している。少数民族の男性兵士たちは戦争に出征することによって、ベトナム語が上達し、他の民族の人々ども交流をもち、また広くベトナム国内を転戦し、ベトナム全域的視野をもつようになった。南ベトナムやラオス、カンボジアにいった兵士も多くいた。とりわけラオス国境に住むターイ族はほとんど全員がラオスに駐屯した経験をもっていた。2本目は、南部のベンチェー省の省隊・参謀長だった人物のインタビューをまとめたものである。従来の研究では、中央政府の政策資料や高級軍人の回顧録などが研究に使用されてきたが、地方の省の現場責任者の証言はほとんど利用されておらず、その点に本論考の新奇性がある。また本論考は、1960年のベンチェー蜂起が「自然発生的」なものであるとの従来の説に疑義を投げかけ、ベトナム戦争における南部や民族解放戦線の自律性についても疑問を呈した。 本年度の聞き取り調査はタイグエンとクアンビンで実施した。タイグエンはベトナム北部にあり、ベトナム戦争中に中国軍が駐屯していたところでもある。ベトナムの歴史資料ではそのナショナル・ヒストリー性から中国軍の駐屯について言及されることはほとんどないが、今回の聞き取り調査では人数は多くないがその点の証言をえることができたのが成果である。クアンビンでの聞き取り調査では米軍の爆撃についての多くの証言がえられた。
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Research Products
(4 results)