2010 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム国内での聞き取り調査によるベトナム戦争の記憶に関する研究
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20510226
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
今井 昭夫 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (20203284)
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Keywords | ベトナム / 戦争の記憶 / ベトナム戦争 / オーラルヒストリー / ベトナム現代史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ベトナム国内においてベトナム人がベトナム戦争をどのように記憶しているのかの聞き取り調査を通して、(1)「低い位置の視線」からベトナム戦争を歴史的に再検討し、(2)ベトナム戦争後の兵士の復員状況や「戦後処理」を明らかにし、(3)ベトナムでの「戦争の記憶」のあり方がどのようなものであり、戦後ベトナムにおいて如何なる政治史的・精神史的意味をもってきたかを辿ろうとするものである。これによってベトナム現代史におけるベトナム戦争の影響の様相を具体的に提示し、現代ベトナム地域研究に寄与しようとするものである。 今年度は、フエ市とクアンガイ省における聞き取り調査の結果を論文にまとめた。フエ市の調査では以下の点が明らかになった。(1)フエ市が属していたチティエン軍区では17度線の暫定的軍事境界線を跨いだヒトとモノの動きが活発であり、17度線の分断性を強調しすぎるべきではない。また南ベトナム解放民族戦線の自立性と主体性には疑問がつく。(2)テト攻勢では当地では大きな成果を挙げたが、テト攻勢後、当地での解放勢力側は消滅の瀬戸際まで追いつめられた。この危機をしのぐことができたのは、「人民戦争」性によっている。(3)戦争に参加することによって国民意識が形成されていく様が窺えた。(4)退役した高級軍人は恩給などで厚遇されている一方、十分な待遇を受けていない人も存在する。またクアンガイ省における調査でも同様の結果が得られたが、(1)韓国軍との戦闘の記憶と(2)虐殺の記憶がより浮き彫りとなっているのが特徴的であった。以上、中部での様相がかなり明らかにされたものと思われる。 岩崎稔氏との共編著の中の拙稿では、ベトナム戦争後のベトナム国内における「戦争の記憶」が現在まで、どのような変遷をたどってきたのかの見取り図を提示した。
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Research Products
(3 results)