2008 Fiscal Year Annual Research Report
灌漑から天水へ:20世紀東北タイにおけるコメ生産システム変容実態の面的把握
Project/Area Number |
20510229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
星川 圭介 Kyoto University, 地域研究統合情報センター, 助教 (20414039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 捷朗 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (10027584)
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Keywords | 東北タイ / 天水稲作 / 灌漑 / タムノップ / GIS / 農業生態 / 農業開発 / 生存戦略 |
Research Abstract |
本課題は、20世紀に水田面積が10倍に増加するという急激かつ過剰な水田拡大(地域総面積の4割を水田が占める)を経験した東北タイにおいて、稲の栽培形態(灌漑・天水・技術導入)がどのように変化したか、そして稲作を主要な生業とし、コメを主食とする地域の人々の生活がどのように変容してきたかを、現地調査、地理情報分析、文献調査によって明らかにしようというものである。初年度である2008年度には、8つ設定した現地調査対象地域(流域)のうちの計画通りの4地域で、108の村落における聞き取り調査を実施するとともに、すでにこれまでの調査により多くのデータが得られている東北タイ南部の1流域(タプタン川流域)を対象とした地理情報分析を実施した。また、現地調査の前後にタイ国立公文書館において文献資料調査を実施した。 その結果、地理情報分析からは、灌漑から天水への移行やコメ生産の不安定な乾燥した丘陵の水田の増加といった稲の栽培形態変化の進行過程には地域差が大きいことが示された。また聞き取り調査からは、一般に古い村落ほどコメの安定生産に有利な土地を占めている傾向がある一方で例外も多いこと、水田拡大は地域を通して徐々に一様に成されて来たわけではなく、ある時期にそれまでほとんど未開であった土地が一気に開かれるということを繰り返しながら進んできたことが明らかになった。また、伝統的灌漑技術の分布と伝播に関しては、民族の分布や移動と密接に関わっており、自然条件が灌漑に適するからといって必ずしも灌漑が行われてきたわけではないことが示唆された。国立公文書館での文献調査では、地方領主からの報告書などには本研究にとって有用なものはむしろ少なく、中央政府の役人による報告書が、こちらも数は少ないものの、より有用であることが判明した。2009年度以降の本格調査に向け、文献のリストアップを行った。
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Research Products
(4 results)