2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国農村の「党-政-民」関係-アクターからみた村民自治の政治社会構造分析-
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20510236
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
江口 伸吾 島根県立大学, 総合政策学部, 准教授 (20326408)
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Keywords | 中国農村 / アクター / 大学生村官 / 江蘇省 / 三農 / 統治構造 / 村民自治 |
Research Abstract |
平成22年度は、これまでの調査・研究を踏まえて、自律化・多様化する農村社会と共産党との関係性に着目し、農村社会のアクターに焦点を当てながら、現代中国農村の「党-政-民」関係の変容のプロセスの考察をまとめ、その成果を発表することに主眼を置いた。 まず、2010年7月25日、中華人民共和国黒竜江省ハルピン市で開催された中国社会学会2010年学術年会に参加し、「社会転型与社会治理」のセッションにおいて、「基層社会主体的多元化与自治的政治社会結構-社団論的視角-」と題する報告を行った。本報告では、農村社会の変化を捉える視点として近年中国で注目されつつある社団(Association)に着目し、基層社会における「国家の多元化」「市民社会の公共化」の過程で多元的なアクターが顕在化すると共に、その統治構造が自律的で多様に展開する中国型のアソシエーションを中軸に形成されつつあることを論じた。 次に、農村社会の新たなアクターとして近年着目されつつある「大学生村官」に焦点を当てながら、現代中国農村の「党-政-民」関係の特質を論じた「中国農村地域におけるアクターと統治の再編-『村官』政策の動向をめぐって-」(『総合政策論叢』第21号、島根県立大学総合政策学会、2011年3月、93~104頁、所収)を公表した。本論文では、とくに江蘇省農村地域の動向に着目し、「大学生村官」が村幹部の補佐として活動することにより、党・政府と大衆との関係を再構築する役割を果たし、農村基層政権の統治能力を向上させる機能を担うと共に、その一部が自ら企業家としても活動することにより民間社会の中層レベルのアクターとしても位置づけられることを明らかにしている。その結果、現代中国農村の「党-政-民」関係は、農村地域の自律的な自治への漸進的な移行によりその関係性に分化する傾向性が生まれている一方、「党・政」のアクターが「民」を包摂しながら、その影響力を強化していることを論じた。
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Research Products
(3 results)