2008 Fiscal Year Annual Research Report
「脱領域化する「共同体」の実証的研究を通した地域振興支援の再検討」
Project/Area Number |
20510239
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
真崎 克彦 Seisen University., 地球市民学科, 准教授 (30365837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 真如 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (10444473)
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Keywords | 地域研究 / 開発研究 / 文化人類学 / 社会学 / 現代思想 |
Research Abstract |
現地調査 真崎克彦(研究代表者)は平成20年12月22日から1月2日までブムタン県シンカー村にて、また、12月20日と1月4日は首都ティンプにて、農村共同体の脱領域化について調査を行った(12月21日と1月3日は移動日)。研究計画書に沿った調査を行い、以下の通りの結果が得られた。丁度この期間は農閑期に当たり、普段は村にいない学生や若者が戻っていて、家の増改築や薪・木材の収集などの手伝いをしていた。逆に、農繁期は村で暮らす村人の中には、より温暖な場所に住む親族を訪問したり一緒に聖地巡りに出掛けている人たちもいて、人びとの生活圏の広がりに伴って、相互扶助がシンカー村という境界を越えてより自由な形で維持されている様子が伺えた。同時に、村の脱領域化は、外から入って来る人・物・情報の影響に村がより一層曝されるようにも仕向けるので、その結果、政党政治による対立の促進、貨幣浸透による消費志向の増大など、共同体の紐帯を弱めるという影響をも及ぼしていた。このように地元文化の混淆化が進む中、従来のような閉鎖的で静態的な「共同体」を前提とした地域振興では有効ではないことが明らかになった。 西(研究分担者)は、平成20年9月24日から30日まで、エチオピアのグラゲ県マフェド村周辺において、共同体の脱領域化と地域の持続的発展に関する研究を行った。マフェド村では、アジスアベバ在住のグラゲ県出身者が組織する「グラゲ自助開発協会」の活動の延長として、地域住民を中心に道路や学校が建設されている。西の調査期間は、ふだん首都アジスアベバで生活しているグラゲ県出身者が一斉に帰郷する、雨期あけの祭礼の時期にあたる。マフェド村においては、地域の長老やアジスアベバからの帰郷者を含む集会がおこなわれ、道路や学校の維持管理について討論がおこなわれた。またこの集会では、家畜などの財産を失った世帯や、身寄りのない老人への支援が提案され、その場で現金が集められた。グラゲ県の農村では、一見すると長老を中心とした強固な村落統治がおこなわれているが、実際にはアジスアベバからの送金が村落経済において重要な位置を占めている。また村落で実施される集会でも、都市からの帰郷者が発言力を持つようになっている。村落の領域を出て生活する人びとが、「共同体」の政治経済に重要な役割を果たしていることが明らかになった。 成果発表 研究代表者・分担者は下記の通り論文投稿や学会発表などの個別の成果発表を行った。また研究計画書に記されている「地域共同体と国際協力(仮称)」研究会の発足に向けて、6月27日に京都大学で合同勉強会を開いた。大半の参加者から今後も同様の会合を持ちたいという希望が表明され、正式な研究会へと発展させることも視野に入れた集まりを3月17日に持つことができた。
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