2009 Fiscal Year Annual Research Report
脱領域化する「共同体」の実証的研究を通した地域振興支援の再検討
Project/Area Number |
20510239
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
真崎 克彦 Seisen University., 文学部, 准教授 (30365837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 真如 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (10444473)
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Keywords | 地域研究 / 開発研究 / 文化人類学 / 社会学 / 現代思想 |
Research Abstract |
現地調査 真崎克彦(研究代表者)は、平成22年1月3日から1月13日までブムタン県シンカー村にて、また12月31日と1月1日は首都ティンプにて政府の農村共同体振興について調査した(1月2日と1月14日は移動日)。平成20年3月のブータン初の政党選挙で政権の座に就いた与党は全国各地で開発事業の計画・実施を急いでおり、シンカー村でも農道の整備やミルク集荷センターの設立などいくつかの事業が始まっている。これら事業の結果、人びとは農作物や乳製品を市場で売るようになると想定されるが、人びとの間では収入向上への期待とともに、貨幣浸透による消費志向の増大で「共同体」の紐帯が弱まりかねないことへの懸念も生まれていた。そこで政府機関は並行して協同組合の設立の支援を提供することで村の人びとの不安に応えようとしていた。こうした取り組みが実現すれば、世界的に注目を集める連帯型の経済振興に通じる面があるので、引き続きその成り行きを調査し続けていきたい。 西真如(研究分担者)は、平成21年9月1日から6日まで、エチオピアのグラゲ県マフェド村周辺およびアジスアベバ市において、共同体の脱領域化と地域の持続的発展に関する調査をおこなった。グラゲ県マフェド村においては、都市への移住が地域の農業生産に与える影響について調査した。同村では、若い男性が生計基盤を確立するために、アジスアベバ市等に移住して商業セクターに従事することが多いが、このことは他方で、一部の世帯において農繁期における労働力の不足を招いている。調査の結果、同村では、共同労働組織を活用してこの問題に対処していることが明らかになった。共同労働組織は、世帯間で農作業に必要な労働力を提供しあうものであるが、男性成員の都市移住により農業労働力を提供できない世帯は、貨幣で共同労働組織の労働を「買う」ことにより、農業生産を確保することが出来る。ただし近年では、都市移住を経験した男性がエイズにより死亡し、貨幣収入が絶たれるとともに農業労働力を失うことで、食料の確保が困難となる世帯が増えていることが問題である。 成果発表 研究代表者・分担者は下記の通り論文投稿や学会発表などの個別の成果発表を行い、国際開発学会の全国大会(平成21年11月開催)では共同で分科会『開発を民主化する』を企画・開催した。また、共同研究プロジェクト「アジア・アフリカ地域社会における<デモクラシー>の人類学」(国立民族学博物館、本研究の代表者と分担者を含む総勢14名)を平成21年10月に立ち上げた。
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