2010 Fiscal Year Annual Research Report
脱領域化する「共同体」の実証的研究を通した地域振興支援の再検討
Project/Area Number |
20510239
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
真崎 克彦 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (30365837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 真如 京都大学, 東南アジア研究所, 助教 (10444473)
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Keywords | 地域研究 / 開発研究 / 文化人類学 / 社会学 / 現代思想 |
Research Abstract |
真崎克彦(研究代表者)は、ブータン中央部のシンカー村と首都ティンプにて現地調査を行なった。近年、同村ではほとんどの世帯が人手不足で四苦八苦しているが、他所で暮らす同郷人は休暇中にはできる限り村に戻り、耕作の準備、家屋の修繕、薪の採集などの力仕事を手伝う。こうした村内外の人たちの織り成す「共同体」は、首都ティンプに住む同村出身者の運営する「シンカー福祉協議会」にも見て取れる。この団体は2009年より非営利の仕出し業を始め、食材を村から調達することで村人の収入機会を創出し、その売上金は村の開発基金として積み立てられている。同団体の蓄えた資金はまだ活用され始めてはいないが、近い将来、村の開発事業に使われる見通しである。 西真如(研究分担者)は、エチオピアの首都アジスアベバと南部のグラゲ県で現地調査を行なった。首都在住のグラゲ出身者は「グラゲ道路建設協会(グラゲ自助開発協会、GPSDO)」を設立し、資金を出し合って故郷に道路や学校などの建設を行なってきた。エチオピア現政権は現在、民族を主体とした分権的・参加型の開発を推進しているが、それは皮肉にもGPSDOにとって好ましい政策ではない。民族を「連続した地理的領域」「共通の文化」などで規定しようとする政府の方針は、地理的に分散し、単一の言語を持たないグラゲの「共同体」の実態とは乖離するからである。 ブータンでもエチオピアでも、政府組織・援助団体による地域振興支援では、地理的領域を超えて形成される「共同体」の存在に目が向けられることは稀である。しかし今後は、一見すると狭い仲間内で暮らすように思える人たちが、実際にはどのような社会関係の中に暮らすのかを把握し、そのさらなる維持・伸長に資するような形で地域振興活動が進められることが大切である。 研究代表者・分担者は下記の通りさまざまな形で成果を披露し、国際開発学会の全国大会(平成22年12月開催)では共同でポスター発表を行なった。また、国立民族学博物館の研究プロジェクト「アジア・アフリカ地域社会における<デモクラシー>の人類学」(研究代表者が主宰、分担者も参加する総勢14名の研究会)で、他地域の研究者とも地域振興支援のあり方を論じる機会を設けた。
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