2010 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム二輪車産業における部品取引関係と地場部品企業の成長
Project/Area Number |
20510243
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
藤田 麻衣 日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東南アジアII研究グループ, グループ長代理 (50450507)
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Keywords | ベトナム / 二輪車産業 / 部品取引関係 / 部品企業 / 産業組織 / 中国 / 能力 |
Research Abstract |
本研究は、伝統的に日系二輪車企業の寡占市場であったベトナム二輪車産業において、中国製模倣車が大量に流入する「中国ショック」が惹起した企業間競争と産業発展のダイナミズムを題材とし、同産業における部品取引関係の変容および地場部品企業の能力構築のメカニズムを解明することを目的としている。 本研究の最終年度にあたる平成22年度には、部品取引関係の変容についての分析を進めた。主なファインディングは次の2点である。(1)ベトナムにおける部品取引関係の変容は、長期的かつ緊密な取引関係をベースとする日本型組織モデル、多数の企業間の激しい競争とスポット的取引に特徴づけられる中国型組織モデルのベトナムの市場・政策環境への適応、および、ベトナム市場を巡る両社間の競争を通じた変容のプロセスとして捉えられる。(2)日本企業は、自らの組織モデルをベトナムで実践するにあたり、日本で育まれてきた組織モデルを新たな環境変化に柔軟に適応させつつも、低価格モデルの開発や国内部品企業の育成など、適応に必要な条件を自ら積極的に作り出してきた。これに対し、中国型の組織モデルを継承したベトナム地場二輪車企業の部品取引関係の変化は、新たなチャンスを捉えた部品企業の成長という偶然の外部的要因を活用することによってもたらされたものであった。 本研究は、近年、特徴が解明されつつある中国型の組織モデルが他の発展途上国にも移転可能である一方で、その移転可能性が現地における企業参入およびそれを支える産業基盤の有無に多分に依拠していること、二輪車産業において長らく支配的な位置を占めてきた日本型組織モデルにも、発展途上国における中国型の組織モデルの台頭を契機として適応と変容が生じていることを実証的に論じたほぼ唯一の成果である。
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