2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本的近代家族の成立における性と生殖-少子化・専業母化・家族の情緒化
Project/Area Number |
20510245
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
宮坂 靖子 Nara University, 社会学部, 教授 (30252828)
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Keywords | 社会学 / 日本史 / 近代家族 / ジェンダー / セクシュアリティ |
Research Abstract |
研究成果の第一は、西欧の社会史研究における近代家族論と日本における近代家族論のレビューを行ったことである。前者は『奈良大学紀要』38(2010年3月)に掲載された。避妊の受容に関する考察には、まず親子関係の観点が持ち込まれ、次に夫婦関係への「性愛化」という視点が重要視されたことが明らかになった。日本の近代家族論については、西欧の社会史研究の影響を受けた第一段階から、近代国民国家論と連動した近代家族論という第二段階を経由し、現在、セクシュアリティ論への接近・融合がみられることが明らかになった。 研究成果の第二は、女性雑誌(主に『主婦之友』と『婦人公論』)を資料として、「避妊」を手がかりとして「家族の情緒化」のプロセスを考察したことが挙げられる。成果は『日本家政学会誌』61-3(2010年5月近刊)で公表予定である。得られた知見の第一は、1920年代は、男性の性欲コントロールと子ども数のコントロールの手段である「避妊」が同時に社会問題化してたことである。従来、避妊の受容は女性側の心理的・身体的要因や子どもの教育、家庭経済(生活水準)などの観点から解釈されてきたが、「夫婦関係の性愛化」という概念の成立が、男性の避妊への関与を積極化させていた。また、第二に、新中間層の人々は、女性雑誌を一つの回路として、「幸福な夫婦・家族」のイメージを形成する情報を入手していたが、同時に、避妊に関する情報やその具体的方法の入手と実行というプロセスを通して、夫婦関係の親密化を経験していた。つまり、近代日本において避妊は「家族の情緒化」に対して重要な役割を果たしていたという仮説はかなり有力になってきたと言えよう。
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