2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本的近代家族の成立における性と生殖-少子化・専業母化・家族の情緒化
Project/Area Number |
20510245
|
Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
宮坂 靖子 奈良大学, 社会学部, 教授 (30252828)
|
Keywords | 社会学 / 歴史社会学 / 近代家族 / ジェンダー / セクシュアリティ |
Research Abstract |
(1) 1916~30年の約15年間に『婦人公論』と『主婦之友』に掲載された避妊に関する記事を資料として,当時の避妊の実態を明かにするとともに,避妊をめぐる言説の分析を通して夫婦関係や家族に付与された意味を考察した.その結果,第一に,1920年代に,男性の性欲のコントロールと子ども数のコントロールの双方の手段である避妊が同時に社会問題化したことが明らかになった.従来,避妊の受容は女性側の心理的・身体的要因や子どもの教育,家庭経済などの観点から解釈されてきたが,夫婦関係の性愛化という概念の成立が男性の避妊への関与を積極化させることに貢献した. 第二に,新中間層の一部の人々は,女性雑誌というメディアを通して,「幸福な夫婦・家族」のイメージを形成する情報を入手していたが,同時に,避妊に関する情報やその具体的方法の入手と実行というプロセスを通して,夫婦関係の親密化を経験していたことが明らかになった.近代日本において,避妊の受容と実践が「家族の情緒化」に対して影響を与えたと推測できる. (2) アリエスらを中心とした西欧の社会史研究のインパクトを受けて始動した日本の家族社会学における近代家族論は,近代家族概念が形成された第一期(1985~90年),近代家族概念についての論争が展開された第二期(1990~2000年),そして学問が停滞した第三期(2000~2005年)を経由し,現在,第四段階(2005年~)の「脱構築期」を迎えている.その契機となったのは、セクシュアリティ論と近代家族論の接合であった.近代家族論の脱構築のためには,セクシュアリティ・アプローチの活用が今後の課題である.
|