2008 Fiscal Year Annual Research Report
単身女性世帯をめぐる社会制度および社会政策等に関するジェンダー視点からの調査研究
Project/Area Number |
20510254
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
高井 葉子 Josai International University, 語学教育センター, 助教 (30316864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
国広 陽子 武蔵大学, 社会学部, 教授 (10308017)
堀 千鶴子 城西国際大学, 福祉総合学部, 准教授 (40316865)
遠藤 恵子 城西国際大学, ジェンダー女性学研究所, 助教 (40327250)
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Keywords | 社会学 / 社会福祉関係 / ジェンダー / 女性 |
Research Abstract |
本研究は、日本国内に居住する50歳代以降の単身未婚女性への面接調査ならびに単身女性世帯に関する国内外の統計・文献調査から構成される。本年度当初の研究計画においては、東京都近郊から5サンプルのインタビューを行う予定であったが、協力者を募る過程で、地方小都市と地方大都市、ならびに農村部に住む女性たちの協力が得られたことにより、平成21年2月から3月にかけて合計7名のインタビューを地方都市と農村部において実施することができた。これらの女性の居住地域の内訳は、地方小都市(4名)、地方大都市(1名)、農村部(2名)である。年齢は、70代(3名)、60代(3名)、50代(1名)である。聞き取り調査は、研究協力者(1名)を含む当該研究グループのメンバー2名(メインインタビュアー、サブインタビューアー)が担当し、協力者への調査趣旨説明ならびにインタビューの録音と原稿起こしについて意向を尋ね、了承が得られない場合は、協力者の希望に沿う形で調査を実施した。調査は、協力者のライフヒストリーを聞くかたちをとりながら、生育家族、教育歴、職業経歴、居住地移動とそれにかかわる諸事情、住居形態、収入とそれにかかわる諸事情について聞き取った。その結果については、今後詳細を検討分析する予定であるが、現在のところ次のような事情や問題があることがわかった。つまり、これらの女性たちのほとんどが、雇用されて働いてきたこと、しかしながら、正規に雇用され退職年齢まで同一事業所で働き続けた者、あるいは働き続ける予定の者は少なく、ほとんどが非正規雇用である。その結果として、既に退職している女性たちの生活費は、本人の年金が全くなかったり、年金がある場合でも不足が生じている。このことは、女性の職業経歴、特に雇用形態におけるジェンダー格差が、単身女性の経済状況に大きく影響し、特に老後の年金生活においてはきわめて脆弱な経済基盤となっていることを示している。次に、住居については、協力者のほとんどが本人名義の住居を所有していた。しかしながら、住居の取得に際しては、相続や援助などの形で親の資産が用いられたケースが多い。また、協力者の多くが親の介護を過去に経験したり、現在も介護の主たる担い手になっており、いわゆる「シングル介護」を経験している。自らが後期高齢者であるにもかかわらず介護の担い手となる「老老介護」も行っているケースも多かった。このことから、親の介護が未婚の娘に委ねられ、そのことにより親の資産が娘に引き継がれ、収入が少ないながらも住居や生活費において最低限の安定が確保されている要因となっているのではないかと推測される。これらの状況については、生活費や住宅価格が低い地方都市・農村部に特有の事情によって説明できるとも推測されるため、21年度は東県近郊に在住する女性へのインタビューを通して、都市部に住む女性たちの生活状況や問題と比較検討したいと考えている。
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