2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20510259
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
星乃 治彦 福岡大学, 人文学部, 教授 (00219172)
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Keywords | ジェンダー / セクシュアリティ / クィア・ヒストリー / 感情学 |
Research Abstract |
本研究は、従来のジェンダー史を展開させセクシュアリティ的観点を導入した歴史像=クィア・ヒストリーの構築を目指すものである。平成21年度は、(1)基本的資料の収集およびデータベースの整理、(2)国内アドヴァイザーとの交流、(3)海外におけるネットワーク構築、(4)適宜情報発信を推進した。本年は、セクシュアリティ関係コレクションをほぼすべて入手し、Who's Who in Gay and Lesbian History, London,2001の翻訳作業もすすめた。またドイツ(ベルリン)への資料収集およびドイツ研究者との意見交換を行った。また、京都大学で開催された「感情学の展望」(2009年7月11日)に討論者として参加し、「感情」という理性的領域ではない側面が歴史や政治にもたらす影響をも学問として俎上にあげる必要性を認識するに至った。クィア学会(2009年10月17日)では、現在日本においてゲイ、レズビアン、バイ、トランスジェンダー/セクシュアルといった特定のセクシュアリティとほぼ同義語で使われることが多い「クィア」の複雑な歴史的・文化的文脈に注目し、「クィア」の属性が自明視されることの問題点や特定のアイデンティティに還元されない「クィア」の可能性に焦点をあてるというアプローチから示唆を得た。情報発信については、熊本県立大学文学部フォーラム(2009年11月21日開催)にて報告した内容をもとに、同大学文学部紀要『文彩』(6号)に「つくられる「おんな」の身体、「おとこ」の身体-その歴史的形成過程」を執筆した。 以上の研究活動をもとに、セクシュアリティを西洋史全体のなかに位置づけることで、古代、中世、近世、近代、現代といった時代による特質が抽出された。また、そこから派生する「家族」や「友情」といった様々な関係性や「公」「私」の問題の歴史も浮かび上がった。
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