2011 Fiscal Year Annual Research Report
ボルネオ島中央部における生態資源に関する民俗知識のネットワーク
Project/Area Number |
20519003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小泉 都 京都大学, 農学研究科, 研究員 (00506884)
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Keywords | 民族生物学 / ボルネオ / 狩猟採集民 / 生業変化 |
Research Abstract |
本研究は、ボルネオ島中央部における生態資源の利用とそれを支える民俗知識の動態を明らかにすることを目的としている。最終年度である平成23年度は、研究成果の公表と、調査で採集した標本の同定の最終確認などのハーバリウムワーク(ボゴール、クチン、サンダカン、シンガポールの標本庫で実施)に重点をおいて研究を行った。 研究成果の公表については、狩猟採集民の農耕導入という生業変化についての論文を執筆し、これが査読付き雑誌に採択された。この論文では、ボルネオの狩猟採集民の1集団の生業変化について論じた。ボルネオの森林地域での主要な生態資源利用形態には、森林資源の狩猟採集、森林の再生(遷移)を利用した焼畑稲作などがある。前者に頼って生活していた人々が後者を導入するときに、どのようなことが起こるだろうか?対象集団は1950年代から70年代にかけて定住化して焼畑稲作を導入していった。しかし、現在でも農作業を計画的に行っておらず、主食となった米の収穫が十分ではない。林産物販売や日雇労働から現金収入を得ているが、貯蓄の習慣がないため、生活必需品の購入にも窮する状態にしばしば陥っている。これは、労働投入から食料獲得までの時間が短い、食料を備蓄しない、食料を集団内の全てのメンバー(世帯)に分配する、富を蓄積しないといった狩猟採集民の生活様式や文化の特徴が残存しているためだと考察した。農業などの技術や貨幣経済は比較的容易に導入できても、狩猟採集社会を支える倫理や行動規範を、農耕社会のそれへと転換することは難しいのだと考えられる。
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Research Products
(2 results)