2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520001
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
千葉 惠 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 教授 (30227326)
|
Keywords | 信 / 共約可能性 / 意味論的分析 / 自由 / 恩寵 / 両立可能性 / ロギコス / ピュシコス |
Research Abstract |
信の哲学の可能性を、信じる者にも信じない者にも共約的な次元を開拓することを通じて探索した。パウロは神学的現実と思考(神の前の現実とひとの前の現実を分断させない聖霊の現実性に訴え思考する様式)を三つのそれぞれ相対的に独立した三つの実在の層として分節して哲学的にも無矛盾なものとして思考していることを「ローマ書」の分析を通じて明らかにした。パウロは神の前のふたつの現実(福音のもとにある義人(3章21-25)と律法のもとにある罪人(1章18-3章20))の他に「汝らの肉の弱さの故に人間的なことを語る」としてそれら二つの可能存在としての責任ある自由のもとにある存在者としての生身の人間の現実存在(3章26-31)を承認していた。彼はそれらの個所において「信(ピスティス)」という語において福音のもとでのナザレのイエスにおいて啓示された人間のあいだで「何ら差異がない」「イエスキリストの信」(3. 21-22)と生身の人間がもつ強弱ある成長や衰退のありうる個人的に異なる信仰としての信(3. 27-30)を判別していた。 この基本的な理解のもとにアウグスティヌスとペラギウスの恩寵と自由をめぐるいわゆるペラギウス論争を分析した。パウロの信の二相の理論から彼らの論争の調停案を提示し、両者が和解しうることを論証した。信の哲学の基礎理論となる言語分析(述語づけ可能なもの(predicabilia)と述定の分析)の理論の学会発表を米国Rutgers大学で2008. 10. 5で発表した。これはペラギウスが主に思考を展開するロギコスな思考がいかなるものであるかを明らかにする神学的思考の基礎をなす研究である。
|