2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520008
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
加茂 英臣 Chiba University, 教育学部, 教授 (20114267)
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Keywords | ミメーシス / フロネーシス / 習熟 / エートス / アリストテレス / ヘクシス / 性向 / 欲望 |
Research Abstract |
本研究は、アリストテレスの〈思慮(フロネーシス)〉概念とプラトンのそれとの違いを確認したうえで、近代によるその継承としての〈プルーデンス〉概念の変貌を確認することを目標としている。プラトン・アリストテレスのフロネーシス概念に関して近代プルーデンス概念が遺棄してしまった一つの重要なポイントが、研究過程で浮かび上がってきた。近代が遺棄したこのプラトン・アリストテレスのフロネーシス概念の質構造を把握するという課題が本年度の主要課題であった。それに従って、プラトンそして特にアリストテレスにおいて、行為主体の成熟した行為を導く知、フロネーシス自体が、その成熟するための条件として〈ミメーシス〉と〈習熟論(ethismos)〉を前史として前提しているという論点を丁寧に仕上げることができた。それが、20年度研究成果としての「習熟による欲望の変貌-ヘクシスとミメーシス」である。ミメーシスと習熟論の関係は、プラトンでもアリストテレスでも晦渋・曖味なところがあり、従来の研究書や論文でも一貫した解明はなされていないことが、当研究者にとって不満であった。その意味で上記論文は、この点を明らかにした作業として十分評価できると思う。 また、20年度の研究目標としては、古代ギリシアにおけるミメーシス・習熟論の枢要な社会的装置としての〈饗宴(symposion)〉を理論的にも文化的(図像的)にも把握することをも含んでいた。〈饗宴〉に関する図像もアテネやベルリンの歴史博物館、図鑑などから多数収集し、これに関する文献的把握も十分に行うことができた。〈饗宴〉に関して文献と図像を共に活用した、哲学的成果というものをどのようにまとめ上げるかというのは、次年度以降の課題として引き継ぐことになった。
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Research Products
(1 results)