2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520009
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
和泉 ちえ 千葉大学, 文学部, 教授 (70301091)
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Keywords | プラトン / ゲラサのニコマコス / 新ピュタゴラス主義 / マテーマタ / アルキュタス / フィロラオス / 数論 / プラトン主義 |
Research Abstract |
前年度までの成果を踏まえながら,ニコマコス『数論入門』および新ピュタゴラス主義を巡る関連諸論文を精査すると共に,引き続き『数論入門』の訳出および注釈作業に集中した. 1.ニコマコス『数論入門』の叙述細部をニコマコス(イヤンブリコス)『数論に関する神学的考察』と比較検討しながら,数論を巡る思想的枠組みの展開過程を精査した.特に数学的4科(数論・幾何学・天文学・音階学)の主軸として機能する数論に着目した場合,新ピュタゴラス主義と新プラトン主義の二つの潮流が如何なる相関関係を示すのか,思想史の上では抽出し難い手掛かりを,上記両作品の比較を通して再検討した. 2.ニコマコス『数論入門』の各論と,アルキュタスおよびフィロラオスの諸断片との相互関連について検討を加えた.この作業を通して,ニコマコスにおけるピュタゴラス学派の学説受容に関する諸傾向を描出することができた. 3.上記作業を通して,プラトン諸対話編(特に『国家』『テアイテトス』『ポリティコス』『法律』『エピノミス』等)から着取される数学的記述が哲学史上如何に位置付けられるうるのか,その見取り図を描出するたあめ手掛かりを得ることができた.即ち,ニコマコス『数論入門』を視野に入れることによって,プラトン当時のアカデメイア以来の懸案事項でもあった「プラトンとピュタゴラス学派両者の関係」をより深く認識ずるための議論の枠組みを整理することが可能になった. 4.ニゴマコスが活躍したゲラサに関する文献調査を行った.この作業を通して,古代地中世界におけるマテーマタの継承が,具体的にどのような地域および統治体制の中で展開されたのか,当時のギリシァ知識人の活動を支えた諸条件について検討を加えた.この問題は,更なる調査が必要であり,今後の検討課題『として精査を継続する.
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