2009 Fiscal Year Annual Research Report
プラトン中期における「原因」概念とその後期に対する影響関係の検討
Project/Area Number |
20520013
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
今泉 智之 Mie University, 人文学部, 教授 (30322978)
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Keywords | プラトン / パイドン / 原因 / テアイテトス |
Research Abstract |
本研究は、「それ自体として独立のもの」、すなわちイデアが存在することを前提し、この世界の事物の成立をイデアとの関与で説明する、プラトン中期の著作『パイドン』の「イデア原因説」の内実を見極めるとともに、その考え方が、後期の始まりに位置する『テアイテトス』にどの程度影響しているかを検討することを目的とする。本年度の主な研究成果は二つある。一つは、アリストテレスが『形而上学』第1巻第9章と『生成消滅論』第2巻第9章において行っている『パイドン』批判の意義を検討したことである。アリストテレスはこの二書において『パイドン』のイデア原因説に言及し、いわゆる四原因(起動因、形相因、目的因、質料因)説の立場から、『パイドン』では形相因と起動因が混同されているとして批判している。これについては、イデアに起動因の役割を帰しているとするアリストテレスの理解は正しいとる見方と、アリストテレスの『パイドン』理解は誤りであるとする解釈が対立している。本年度は『パイドン』のテキストを精読することにより、前者的解釈のほうが正しいことを示した。この研究成果は三重哲学会において発表した(「アリストテレスの『パイドン」批判)。しかし諸般の事情により、論文として公刊するのは来年度以降になった。もう一つは、『テアイテトス』において展開されているプロタゴラスの相対主義に対する批判について、他の対話篇と関連させながら、その倫理上の意義を示したことである(「倫理学の基層-古代ギリシアからの問い」。これは、来年度以降に行う『テアイテトス』における世界観の検討の凖備作業の意味をもつものでもある。
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