2010 Fiscal Year Annual Research Report
プラトン中期における「原因」概念とその後期に対する影響関係の検討
Project/Area Number |
20520013
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
今泉 智之 三重大学, 人文学部, 教授 (30322978)
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Keywords | プラトン / 『パイドン』 / 原因 / 『テアイテトス』 |
Research Abstract |
本研究は、「それ自体として独立のもの」、すなわちイデアが存在することを前提し、この世界の事物の成立をイデアとの関与で説明する、プラトン中期の著作『パイドン』の「イデア原因説」の内実を見極めるとともに、その考え方が、後期の始まりに位置する『テアイテトス』にどの程度影響しているかを検討することを目的とする。本年度は主に、アリストテレスが『形而上学』第1巻第9章と『生成消滅論』第2巻第9章において行っている『パイドン』批判の意義を検討した。アリストテレスはこの二書において『パイドン』のイデア原因説に言及し、いわゆる四原因(起動因、形相因、目的因、質科因)説の立場から、『パイドン』では形相因と起動因が混同されているとして批判している。これについては、プラトンはイデアに起動因の役割を帰しているとするアリストテレスの理解は正しいとする見方と、アリストテレスの『バイドン』批判は誤解にもとづいているとする解釈が対立している。本年度は『パイドン』の当該箇所のテキストを精読することにより、前者の解釈のほうが正しいことを示した。とくに、アリストテレスの『パイドン』批判は正しいとする論者のうち、ハックフォースとファインを検討し、ファインの見方のほうが、『パイドン』のテキストにより忠実であることを明らかにしたが、あわせて、当該の議論に現れる<火>、<雪>などを個物と見なすファンの解釈には疑問の余地があることも指摘した。この研究は前年度から継続していたものであるが、今年度さらに内容を深めることによって、論文「アリストテレスの『パイドン』批判」として公刊することができた
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