2009 Fiscal Year Annual Research Report
ケアリングの臨床哲学的基礎付けから出発する看護倫理学の構築
Project/Area Number |
20520028
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Research Institution | Tenshi College |
Principal Investigator |
堀井 泰明 Tenshi College, 看護栄養学部, 准教授 (50326609)
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Keywords | ケア(ケアリング) / 看護倫理 / 医療倫理 / 臨床哲学 / 徳の倫理 / 自己実現 |
Research Abstract |
今年度はおもに米国における看護倫理の文献資料を分析し、米国における看護倫理の成立史と看護倫理の理論的枠組について考察を進めた。看護倫理は20世紀半ばに誕生した現代的な医療倫理・生命倫理から派生した新参者と思われがちである。しかし米国の看護倫理史をひも解けば、たとえば倫理綱領はすでに1920年代から試案が出され、そもそも看護倫理という題目は19世紀末には確立されていた。たとえその内容がマナーやエチケットといった一見「ささいな」ものであったとしても、看護では専門職としてのあり方が早い段階から倫理の問題として議論されてきたことを今回の研究で明らかにすることができた。 同時に、こうした経緯から看護倫理はいわゆる徳の倫理として、専門職としてのあり方を議論する倫理として形成されてきたことを今回明らかにすることができた。具体的問題に対応するには当然、様々な原理原則を活用し最善策を絞り出すことが肝要だが、まず患者にコミットする姿勢が医療者には問われるわけであり、それを主題化するのがケアリングという徳なのである。ケアリングという徳があればこそ患者とその問題に関与する土壌が築かれ、その上で原理原則が患者の安寧に向けて活用される。ケアリングを倫理的徳として捉える端緒を今年度は発見することができた。その理論的構造の分析と、看護倫理との関係性の考察が次年度の課題となろう。 なお今年度の研究成果については、日本倫理学会(10月)でその一部を報告し、さらに3月発行の天使大学紀要にて公表した。その他、11月の日本生命倫理学会では看護倫理に関するシンポジウムに指定討論者として参加し本成果を活用した発言を行ったほか、6月の大学教育学会でも本成果の一部を利用した報告をすることができた。
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Research Products
(4 results)