2008 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的思考・直観と実存-幾何学性と物理的実在性の関係の認識論的分析-
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20520029
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Research Institution | Sendai Shirayuri Women's College |
Principal Investigator |
原田 雅樹 Sendai Shirayuri Women's College, 人間学部, 准教授 (90453357)
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Keywords | 作用素代数 / 非可換幾何学 / グランジェ / 概念の哲学 / 作用と対象の双対性 / 現象学・解釈学 / 視覚的思考 |
Research Abstract |
「幾何学的存在論と物理的実在性」(現代思想、35/16、2007年12月、pp.183-203)、及び下記の論文2本のそれぞれにおいて、現象学、フランス科学認識論の一つである概念の哲学、解釈学を用いて、現代数学の一つである非可換幾何学の概念の構成とその解釈について分析した。現象学的分析においては、フッサールのエポケー、実在、空虚なXという概念に焦点をあて、それを絶対意識内の作用ではなく、科学活動内部での作用において機能する概念として理解しつつ、それらが非可換幾何学における空間概念が構成される際にどのように機能したかを分析した。グランジェの概念の哲学を援用した分析においては、「脱空間化」と「再空間化」の弁証法、「自然的」な数学概念、「作用と対象の双対圏」と「導来圏」といった数学的概念から転用された哲学概念を用いた。そして、「数と空間といった数学における自然的概念は、数学的対象を顕在化する数論と幾何学という数学的分野の中で、再構成されたり、新たに産出されたりしていくが、それは、操作を顕在化し、概念を厳密化することを可能にする代数学と解析学という数学分野を媒介としている」という主張を示した。解釈学的な分析においては、リクールにイコンの概念、すなわち言語的なものと準視覚的イメージが交叉する場としてのイコンの概念を用いて、非可換幾何学の幾何学性というものについて考察した。古典的・可換な幾何学の準視覚的イメージとのアナロジーが、非可換幾何学における抽象化された準視覚的イメージというものを可能にする。この場合の準視覚的イメージは、直接的知覚によって与えられるイメージの再現などといったものとは異なる。非可換空間は、様々な非可換な作用素に意味論的統一を与えるが、この意味論的統一がその準視覚的イメージと密接に関わっているのである。そして、この意味論的統一を与える何かが空間なる対象と呼ばれるものと考えることができるということを提案した。
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Research Products
(3 results)