2010 Fiscal Year Annual Research Report
神秘主義のエロース的形態のギリシア古代末期・イスラーム哲学比較研究
Project/Area Number |
20520030
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
堀江 聡 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (40238788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20422496)
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Keywords | 哲学 / 神秘主義 / ギリシア / イスラーム |
Research Abstract |
研究の全体構想は、古代プラトン主義の哲学文献が、ギリシア語・アラビア語・ラテン語と言語媒体を変え、時代も移り、著者・翻案者の宗教(異教・イスラーム・中世ユダヤ教)も異なるに応じて、いかなる変貌を遂げるかを追跡することにより、ギリシア・イスラーム・ユダヤ縦断の精神史を描くことが最終的な狙いである。 今年度は、平成20~21年度の研究成果をもとに、ギリシア古代末期とイスラーム哲学との比較の共同作業を行った。つまり、共同でお互いの翻訳、分析を検討し、またそれぞれが研究発表を行い、翻訳および論文を執筆した。堀江聡は、ギリシア古代末期の哲学者、プロティノスとイアンブリコスのエロース観を分析し、青柳かおるは、イスラーム神秘主義者のガザーリーと新プラトン主義的流出論を取り入れ存在一性論を唱えたイブン・アラビーを分析した。そして上記4人の哲学における神秘主義のエロース的形態を比較し、ギリシアからイスラームへの影響の程度、変容の度合いを測定し、ひいては諸形態の共存可能性、止揚可能性についても哲学的に考究した。 人格同士としての神と人との交わり(ペルソナ的恋愛)、男女としての神と人との交わり、一種の愛で結ばれた大天使・天使・神霊・英雄・(人間以外の)動物・植物・無生物との神の交わり(宇宙論的恋愛)、神名と神との愛で結ばれた関係(言語論)、絶対者と爾余の一切との断絶を克服せんとする愛(形而上学的愛)といった問題群が分析のゾンデとなった。
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