2008 Fiscal Year Annual Research Report
前期「近世神話」論の形成と展開ー倫理思想史の観点からー
Project/Area Number |
20520031
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
清水 正之 Seigakuin University, 人文学部, 教授 (60162715)
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Keywords | 倫理思想 / 神話 / 神道 / 近世思想 / 儒家神道 / 本居宣長 / 新井白石 / キリシタン |
Research Abstract |
本研究は、近世徳川期の知のひとつの形態である神話研究、神話論について、その形成期である前期を中心に考察するものである。前期とは、単に時間的に先行するというだけでなく、本居宣長の『古事記伝』が神話論の劃期をなしたことに対して、その宣長の神話論に先立ち、影響をもったいくつかの神話論あるいは神道理論をさす。それにはいくつかの流れがある。(1)林羅山ら儒者の神道論、(2)それらと密接な関係をもった吉田神道等の神話論,(3)同じ儒教をもとにしながら独自の神話研究に端緒をひらいた新井白石、(4)宣長に先行した国学の流れで神話的関心をよせた荷田春満、賀茂真淵、(5)ほぼ同時代の谷川士清など以上ともやや異なり宣長に通じる流れ、(6)さらにくわえるならキリシタンの神話論の影響(これらは林羅山ら儒者の議論の背景に明白に看取できるし、新井白石においても同じである)これらを総合的、統合的に思想史として把握することをこころがけた。今年度は、とくに(3)(4)を中心に研究を進め、それとの連関で、この研究の目的、方法をあらためてあきらかにするべく論考で、それを考察した。とくに本居宣長の先行思想との関係を整理しなおした。今次年度以降にひきつづき考察を続ける。諸外国の研究、比較思想的考察については、本年度は、フィンランドのカレワラ神話の採集された19世紀の時代背景を、やや広く当時の欧米での神話研究等にひろげることで、また、東アジアでの神話的知への関心と連関させる視点を、わずかながら手にすることができた。これらは次年度以降に公表する。
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