2009 Fiscal Year Annual Research Report
前期「近世神話」論の形成と展開-倫理思想史の観点から-
Project/Area Number |
20520031
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
清水 正之 Seigakuin University, 人文学部, 教授 (60162715)
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Keywords | 近世神話 / 本居宣長 / 倫理思想 / 近世日本思想 / 新井白石 / 国学 / キリシタン / 新儒教 |
Research Abstract |
近世前期の神話世界をあきらかにするという本研究の段階的な計画に基づき、21年度の研究を遂行したが、当該21年度は、 1 とくに中期の本居宣長の古事記解釈が結実するまでの、国学的な思想のながれのなかでの、思想史的連関をあきらかにすることに、大きな狙いをおいていたが、その点での成果があった。 2 また最初の年度以来の、東アジアの思想史的連関のなかでの、日本神話の近世的解釈の意味の解明についても、中国の研究者との協力また台湾での論文出版をとおして、一定の進展をみた。 3 東アジアの思想史的連関では、韓国の研究者との国際シンポジウムで、韓国思想史での「開闢」思想等の展開と理解に触れる機会があり、東アジア、とくに新儒教の変容のなかでの、神話的思惟の思想的表現について、その機会にえた知見を成果として発表した。 4 全体の研究の進行について:中期の本居宣長の神話解釈には、(1)林羅山ら儒者の神道論、(2)それらと密接な関係をもった吉田神道等の神話論、(3)同じ儒教をもとにしながら独自の神話研究に端緒をひらいた新井白石、(4)宣長に先行した国学の流れで神話的関心をよせた荷田春満、賀茂真淵、(5)ほぼ同時代の谷川士清など以上ともやや異なり宣長に通じる流れ、(6)さらにくわえるならキリシタンの神話論の影響(これらは林羅山ら儒者の議論の背景に明白に看取できるし、新井白石においても同じである)これらを総合的、統合的に思想史として把握することをこころがけた。今年度は、(6)についても講演等の発表機会をえたが、細かい解釈史の展開と連続・非連続については、今年度は形にできなかったが、引き続き課題として、来年度につなげていくこととなった。
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