Research Abstract |
前期から中期にかけての神話解釈を対象に,神観念・人間の把握・心と超越・世界の構造や組成という視点から,儒教・国学・神道という学派やジャンルによって区切る思想史ではない見方を提示することが本研究のねらいであった。 1. 儒教的なながれのなかでの白石の位置という問題は,なお深める必要がある。また,さらに,彼の経歴上の重要な点であるシドッチとの対話によるキリシタン神話論の知見あるいは『本佐録』などのキリスト教の影響をうけた文書,排耶書等にも通じていたことによる,広汎な知識が,前期神話論のひとつの結び目として,何を達成し,何につながっていたかを,宣長への流れをみながら,前年の知見にうえにおおきくまとめる方向で研究を進めた。 2. 前年度からつづき,国際的な意義に関わることとして,韓国儒教における,神話的志向への知的態度とを近世前期の日本の儒教的神話論の知的態度との比較を行ったが、中国大陸,そして儒教的思考のなかでの,神話の歴史的扱いかた,および最近の学界の動向を調査した。今後のとりまとめに生かしていく。18世紀から19世紀にかけて,ドイツ等の欧米でも神話論が隆盛であったこととの比較思想的検討も最終年次に当たる今年度の課題であった。その成果は一部発表済みだが,今後さらに大きくとりまとめる。 3. 最終年次としての研究のまとめはだが,本テーマは,単に歴史的な考察に終わらず,広義の日本の宗教性,たとえば,「一神教と日本思想・文化」という現代的な問題にまで,およぶ広がりを持つものである。前期国学,あるいは石田梅岩について,この研究との関連で,従来とはことなる見解を論文等で発表することができた。
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