2009 Fiscal Year Annual Research Report
タミル語バクティ詩人・スィッタルたちの思想と運動―ラーマリンガルを中心に―
Project/Area Number |
20520042
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 博司 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 教授 (20230427)
|
Keywords | ヒンドゥー教 / 南インド / タミル文学 / スィッタル / 聖者 / ラーマリンガル / スィッダ / 神秘主義 |
Research Abstract |
本年度はタミルのスィッタルの思想的伝統を文献学的・文献私的に跡づける作業を推し進めるとともに、スィッタルたちの伝統とも関連するタミル中世の『ティルットシダル・プラーナム』とナーヤナール(ナーヤンマール)の問題にも視点を拡張して、聖ラーマリンガル(ラーマリンガスワーミ)に連なる南インド・タミルナードゥのバクティ的伝統のより広い思想史的背景と推移とを考察した。 神像崇拝や儀礼的要素を濃厚に伴うバクティ(帰依信仰)と、(本研究計画の核心をなすところの)聖像崇拝的・宗教儀礼的要素を排するバクティの、双方の共通の起源となっているナーヤナールたち(ナーヤンマール)とその信仰の性格を調べるには、それら聖者たちの生涯と類稀なるバクティとを綴ったタミル語の聖徒列伝『ティルットンダル・プラーナム』(別名『ペリヤ・プラーナム』)を読解し、それぞれの聖者の思想と行状とを詳しく吟味する必要がある。ところが、この書物自体の成立が中世に下るため、バクティ初期に属するナーヤナールたちの実態をどれだけ踏まえているか疑問である。本年度は、スィッタルや聖ラーマリンガルの思想の検証とともに、それと並行し『ティルットンダル・プラーナム』についても批判的考察を試み、その編集の時代背景と時代的要請について研究発表を行い、論文に纏める作業を行った。 以上の作業は、本研究計画の最終年度である平成22年度の包括的考察にとって不可欠なものである。
|