2010 Fiscal Year Annual Research Report
自然的宗教史から見たドイツ観念論思想における「悪」論とその救いの構造研究
Project/Area Number |
20520053
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
諸岡 道比古 弘前大学, 人文学部, 教授 (70133915)
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Keywords | 自然的宗教 / ヨハネ福音書 / 善と悪 / シェリング / フィヒテ |
Research Abstract |
自然的宗教史から見たドイツ観念論思想における悪と救いの構造を解明するために、フィヒテとシェリングの人間観の対比を行い、その違いがヨハネ福音書冒頭部解釈にいかに現れているかを論文「フィヒテとシェリングのヨハネ解釈」において検討した。両者の極めて異なるヨハネ解釈は、フィヒテとシェリングが神、その神と人間との関係、またその人間における悪、その悪の克服時期についていかに捉えるかの差異を明確に示すものであった。この検討は研究目的達成に大いに寄与した。 今までの研究に基づき、丸善株式会社刊『宗教学事典』項目「善と悪」を執筆した。この項目において、カント・フィヒテ・シェリング・ヘーゲル等ドイツ観念論思想に属する思想家を取り上げ、彼らの善悪の定義、定義の根拠、その差異による人間観の相違、また悪の克服時期における違い等について解説を試み、従来行われていなかった宗教学的視点からの解説を提示した。 シェリングの特に後期哲学とヘーゲルの『宗教哲学講義』とを比較検討し、自然的宗教から見た、両者における神観念の相違について、日本宗教学会において「シェリングとヘーゲルにおける神について」と題して発表をした。 ドイツへ事蹟研究に出かけ、ベルリン・フンボルト大学のハーン教授に会い、昨年からの研究(シェリングが通っていたカトリック教会名等)の成果を聞こうとしたが、教授が急病のため、それはかなわなかった。しかし、シェリングとヘーゲルが最後に会ったカールスバートへ行くことができ、彼らが行っていた湯治の有り様を実見することにより、彼らの言う自然哲学への展望を垣間見ることができたように思われた。
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