2011 Fiscal Year Annual Research Report
イスラムのグローバル化による「イスラム共同体」の構造的変化についての研究
Project/Area Number |
20520054
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
八木 久美子 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (90251561)
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Keywords | イスラム / イスラーム / グローバル化 / 共同体 / 権威 / ウラマー / 俗人 |
Research Abstract |
これまで本研究では、イスラムにおける「聖職者」(ウラマー)と「俗人」(一般信徒)の境界線が曖昧になりつつあることを示す典型的な例として、いわゆる「俗人」説教師の活動が大きな支持を得ていることに着目し、ウラマーの動きと対比させるなかでの分析を進めてきたが、その成果を受け、最終年度である平成23年度は、一般信徒の日常生活におけるイスラム性のあり方に焦点を当てた。 なかでも注目したのは、礼拝や断食といったいわゆる(宗教)儀礼の実践よりも、何を食べ、何を身に着けるかに代表される日常生活のありように関する関心の高まりである。生活の細部にまでイスラム性を導入し、それによってイスラム的な生き方を確立しようとする一般信徒の動きが活発になっているということである。 本研究の中心的なフィールドであるエジプトのようにイスラム教徒が圧倒的多数を占める社会では、従来、人々の周辺にあるもののイスラム性があえて問われることはなく、問題となるのは外からやってきたものだけであったが、グローバル化の進行とムスリム・アイデンティティの高まりは、人々の間で生活のイスラム性を常に意識化させることになった。その結果、子供の教育はもちろん、衣食のあり方やときには医療の分野においてまでイスラム性を高めようという動きが顕著であることが明らかになった。 これを換言すれば、一般信徒の消費行動が日常レベルで常に新しい「イスラム性」を構築し続けているということができる。ウラマーはそれに権威を与え、あるいは歯止めをかけるという意味で存在感を示してはいるものの、新しい展開の担い手は一般信徒であることが明らかになった点は大きな成果と言える。
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Research Products
(3 results)