2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520057
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山崎 亮 Shimane University, 法文学部, 教授 (40191275)
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Keywords | 宗教学 / 社会学年報学派 / 『社会学年報』 / デュルケーム / ユベール / モース / 供犠 |
Research Abstract |
フランス社会学年報学派による宗教研究のあり方を体系的に解明し、宗教学の視点からその意義を再検討することを目的とする本研究において、本年度は、ユベール・モース「供犠の本質と機能に関する試論」(以下、「供犠論」と略記)の生成過程を、とくにデュルケームによる関与を中心に検討した。その作業の一貫として、9月には4日間にわたってIMEC所蔵のFonds Maussに収められているゲラ刷りや草稿などの一次資料を調査した。この調査結果もふまえつつ、「供犠論」のテクストの精査、並びにモースとユベール宛てのデュルケームの書簡の分析に基づいて検討を進めた。この結果、1)ユベールとモースの処女作とされるこの論文が、デュルケームも含めた三者の緊密な共同作業の上に成立していること、2)この共同作業のなかから宗教現象の体系的かつ共時的把握という、社会学年報学派の宗教研究の基本的な方向性が確立されたこと、3)この過程のなかでデュルケームに萌した、儀礼による社会活性化の機能という新たな視点が、「供犠論」の結論部分に直接取り入れられていること、が明らかとなった。要するに「供犠論」は、社会学年報学派としての宗教研究の出発点であると同時に、発生論的観点に依拠していたデュルケームの従来の宗教研究からの転換点をなすものでもあった。このように、「供犠論」の生成をめぐって、ユベール、モースとデュルケーム三者による共同作業の内実を具体的に検討する研究は、内外に例を見ない独創的なものといえる。この成果の一端は、「ユベール・モース「供犠の本質と機能に関する試論」の生成--社会学年報学派の宗教学思想I--」として発表している。
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