2008 Fiscal Year Annual Research Report
板碑を素材とする思想史研究の新たな領域と方法の開拓
Project/Area Number |
20520065
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 弘夫 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 教授 (30125570)
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Keywords | 板碑 / 死者供養 / 古墳 / コスモロジー / 石塔 |
Research Abstract |
[基礎資料の収集] 1、 現存する板碑のデータを網羅的に収集すると同時に、その銘文に関するデータベースを作成した。また、板碑に関連する資料とその分析に必要な参考文献・図書・報告書を収集した。 2、 研究の鍵となる主要な板碑について、主として宮城県内において実物についての実地調査を行うとともに、それを写真撮影して記録した。また、アルバイターを雇用し、収集した資料を整理して、データベース化した。 3、 秋田県鹿角市、青森県青森市などで実地調査を行い、広く東北の宗教的・歴史的コンテクストの中で、板碑が制作され、流行していく背景を考察した。 4、 板碑・金石文についてのこれまでの研究文献を、諸分野を横断する形で網羅的に集め、従来なされてこなかったようなスケールの研究史整理を進めた。 5、 金石文を資料として思想分析を行う前提として、国内外の思想史の方法に関する文献を収集した。 6、 奈良県奈良市、天理市、桜井市などで石塔と墓地に関する現地調査を実施するとともに、奈良女子大の研究チームと合同の研究会を実施し、相互の研究成果を披露して知見を深めた。 7、 最新の研究成果を英訳し、アメリカで開催された国際学会において発表した。その際に、現地の日本人墓地の石塔と墓碑の調査を行なった。また本研究の成果を、論文・著書の形にまとめ、数多く公表した。 [分析と考察] 1、 収集した板碑のデータについて、その分析と背景にあるコスモロジー及び死生観の解明を開始した。 2、 板碑をめぐるさまざまな問題について多角的な考察を行った。 板碑は中世を代表する石塔とされるが、石塔の建立は飛鳥時代から見られる現象であり、その伝統は形を変えながら江戸時代に継承されていく。また、石塔の文化は東アジア各地において厚い伝統を形作っている。さらに板碑は単独で存在するものではなく、その建立の背景にはそれを生み出す文化的・思想的な基盤と土壌が存在する。 そうした事実を踏まえて、日本中世の板碑の特質を、時代と国境の枠を超えた広い視野の中でさまざまな角度から検討した。
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