2008 Fiscal Year Annual Research Report
J.S.ミルにおける自由と正義と宗教-現代的課題の先駆-
Project/Area Number |
20520067
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
泉谷 周三郎 Yokohama National University, 教育人間科学部, 名誉教授 (60015394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有江 大介 国立大学法人横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 教授 (40175980)
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Keywords | J.S.ミル / 自由 / 正義 / 宗教 / ロマン主義 / 教養主義 / ワーズワース / コウルリッヂ |
Research Abstract |
初年度においては、第一に、当該課題の研究動向のサーヴェイと、成果として将来刊行を予定している論文集の中核部分を構想すること、第二に、わが国の研究上の弱点であるヴィクトリア時代の文化・社会状況の中でのJ.S.ミルの位置づけを再確認することを、主要な検討・研究課題とした。これらを、まず、以下の連続する研究集会において、当該分野の優れた先行研究者による知識提供とそれを巡る関係研究者による討論という形で実施した。泉谷周三郎(横浜国立大学名誉教授)「ヴィクトリア時代研究の現状:文学・宗教などを中心に」(平成20年7月5日)、山下重一(國學院大学名誉教授)「カーライルとミル:主としてジャマイカ事件をめぐって」(平成20年8月22日)、荻野昌利(南山大学名誉教授)「イギリス『教養主義』の生成と展開:ミル、ニューマン、アーノルド」(平成20年10月25日)、大久保正健(杉野服飾大学教授)「ジョン・スチュアート・ミルの認識論」(平成21年1月31日)。これらによって、『経済学原理』研究をはじめとした社会科学領域に偏りがちであった国のミル研究にとって、人文的側面、政治的側面などヴィクトリア時代知識人ミルの理解に不可欠である諸要素の重要性を確認できたことは大きな成果であった。この点は、将来の刊行物による成果発表の内容に従来にない特色を与える契機となると考える。あわせて、ミルの個人的知性史にとって大きな転換を促したワーズワースやコウルリッヂらのロマン主義詩人からの影響に焦点を絞った資料収集を、ロンドン、ウィンダーミア、オクスフォードの関連箇所にて行い、総計約60冊の研究文献を購入した。「精神の危機」を救済したと言われるだけで、内容の検討の乏しいミルとロマン主義の関係についての次年度以降の検討にとって、大いに資する成果と言える。
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Research Products
(3 results)