2009 Fiscal Year Annual Research Report
モダニティとニュートン主義:創造/反復、エクスタシス/現前性、自己中心化
Project/Area Number |
20520069
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長尾 伸一 Nagoya University, 経済学研究科, 教授 (30207980)
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Keywords | 近代思想 / 科学史 / ニュートン主義 / モダニティ / 西洋思想史 / 啓蒙 / ブリテン / 方法論 |
Research Abstract |
21年度は以下の二点の解明を行うことを目的とした。 (3)初期近代の理性概念の多様性と矛盾を、古代、科学革命、啓蒙と19世紀を比較することで明らかにする (4)ニュートン主義の世界喩の成立と性格を、イギリスと大陸のニュートン主義および儒教文化圏の東アジア(とくに日本)の比較対象によって浮き彫りにする とくに(3)に関しては、トマス・リードの視覚論と複数性論を中心にすえて、それをルネサンス以来の知識論との連続性や、初期ニュートン主義の複数性論との連関で考察し、その中での「理性」の位置づけを理神論者ペインや大陸のカントと比較して異同を検討し、また19世紀の複数性批判者だったヘーゲルやフォイエルバッハと対比することによって、18世紀のニュートン主義者たちが抱懐した「理性」がいまだに古代的な、普遍的、存在論的理性の延長上にあったことを解明した。それはデカルト的な認識論的反省を加えられつつ、人間の内奥から世界の根底へとつながるものであり、その点で19世紀以後の計算的理性とは異なっていた。 (4)については、イギリスの代表的な天文学者・ニュートン主義者であるジョン・キールの著作の江戸時代後期における翻訳を検討し、キリスト教以上に儒学的世界観が複数性論と矛盾なく共存したこと、その点で東西の18世紀的世界の同一性が見られることを明らかにした。
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