2010 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ啓蒙主義期の知識人論における有用性/普遍性の対立の研究
Project/Area Number |
20520070
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 渉 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (20314411)
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Keywords | 啓蒙 / 教育思想 / 新人文主義 / フリードリヒ2世 / ハーバーマス / 知識人 / 有用性 / 普遍性 |
Research Abstract |
今年度は、1.資料研究として、これまで調査してきた18世紀の教育理論、特に、その中で重要かつ特殊な位置を占めるフリードリヒ2世の教育観を再検討した。フリードリヒと、彼のもとで教育行政にあたったツェードリッツのもとで進行した一連の改革は、<教育の公事化>としてとらえることができる。これは、教育の<普遍性>と<有用性>の対立を、後者の主導のもとに止揚するタイプの言説だったといえよう。その意味で、後にフンボルトらの確立する、いわゆる新人文主義的理念とは対照的であると同時に、それを準備するものでもあった。以上の成果は、『ドイツ啓蒙主義研究10』所収の論考に発表した。 2. 理論研究としては、引き続きハーバーマスのコミュニケーション行為論の観点から、啓蒙期以降の教育がになった機能と問題を体系的に考察した。フリードリヒ2世の教育論に見ちれたような<有用性>の言説は、近代世界を規定する主要な価値観となっているが、同時に、近代が可能にしている脱伝統化した教育は、そうした有用性に回収しえない諸問題に対して解決を迫る。そのような解決は、仮に可能だとすれば、有用性(成果志向的行為)とは別のレヴェルで、ハーバーマスのいうコミュニケーション(了解志向的行為)のレヴェルでしか生じえない。この点については、近刊『啓蒙の運命』所収の「繊細と忍耐-コミュニケーション的合理性の<運命>」で詳細に論じることができた。
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Research Products
(3 results)