2010 Fiscal Year Annual Research Report
マハートマ・ガンディーのカースト観-伝統と近代の狭間で-
Project/Area Number |
20520071
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
石井 一也 香川大学, 法学部, 教授 (70294741)
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Keywords | ガンディー / アンベードカル / サナタニスト / ヒンドゥー教 / カースト制度 / 不可触民制度 |
Research Abstract |
平成22年度においては、ガンディーのカースト観について分析を進める傍ら、ガンディーに関連する次の二つの仕事を行った。第一に、拙稿"Gandhism in the Age of Globalization : Beyond Amartya K.Sen's Criticism"をGandhi Peace Foundation発行のガンディー研究誌Gandhi Margに投稿した(2010年4-6月号に掲載)。第二に、Ajit K.Dasgupta, Gandhi's Economic Thought, Routledge,1996を監訳、『ガンディーの経済学-倫理の復権を目指して-』と題して作品社より出版した。前者は、2007年の拙稿「グローバル化時代におけるガンディー思想の意義」に加筆したものである。後者は、5人の共訳者の下訳をもとに表現を統一し、同時に「監訳者あとがき」を執筆した。 研究の主柱たるガンディーのカースト観については、2010年夏にスタンフォード大学にて鋭意文献の収集と分析に努め、現在は最終的に論文にまとめる作業を行っている。とりわけ、ガンディーを暗殺したナトラーム・ゴードセーの法廷証言関連の文献を2009年に引き続き入手できたことは大きな収穫であった。ガンディーは、不可触民出身の近代主義者アンベードカルの批判にもかかわらずカースト制度を支持したが、同時に不可触民制度を支持するバラモンらの伝統主義的考え方を激しく批判していたのであり、そのカースト観は、近代と伝統の狭間をゆくものであったことが理解される。マックス・ヴェーバーは、カースト制度に資本主義の発展を妨げる要素を見出していたが、ガンディーはまさに、インドの資本主義的発展につながる利己心の制御をカースト制度に求めていたと見ることができる。
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