2010 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀前中期の江戸・東京における家族の実態を道徳思想
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20520075
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
早川 雅子 目白大学, 社会学部, 教授 (70212305)
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Keywords | 日本思想史 / 江戸・東京 / 幕末・維新 / 民衆道徳 / 孝 / 都市家族 / 人別帳 / データベース |
Research Abstract |
1.人別帳データベースの作成:(1)「麹町十二丁目人別帳」3本(元治2年・慶応2年・明治2年)、「渋谷宮益町人別帳」 2本(慶応1年・明治1年)、「四谷伝馬町新一丁目人別帳」2本(慶応1年・明治2年)のデータベース作成は一通り完了した。(2)「四谷塩町一丁目人別帳」8本とあわせた計15本分のデータベースを、WEB公開のため準備中である。具体的には、表記の統一化、所在地・寺社名の最終確認、テンプレートの検討である。 2.人別帳データベースの分析:(1)四谷塩町1丁目人別帳データから有配偶世帯の特徴を分析し、(1)有配偶率の上昇は男性35才・女性30才、(2)婚姻適齢期における未婚者は、男女ともに10%以上は存在し、それらの世帯は老齢の親と同居する形態が大半であることを解明した。(2)麹町十二丁目人別帳データ、四谷伝馬町新一丁目人別帳データから、家族形態を分析した。四谷塩町1丁目と比較すると、両町ともに単純家族世帯の割合が高い点に特徴がある。その理由の解析を含めた報告書を、現在作成中である。 3.道徳思想の考察:(1)太宰春台撰『古文孝経孔氏伝』が、近世日本における『孝経(孔伝)』普及に果たした意義を、分章の仕方という観点から総括し、(1)章の増設、(2)解釈の幅の拡がりを指摘した。(2)19世紀前半以降の孝道徳では、孝行の目的と動機付けとして、家の維持存続に加えて、親の恩・親と子の愛情という要素が加わることを指摘した(3)恩愛の思想の変遷を、18世紀世紀以降の教育書を資料に分析し、18世紀後半から恩愛が明確に意識され、それ以降の教育に継承されていくことがわかった。(4)18世紀後半の孝道徳を、「孝子伝」を資料に検討した。この時期の孝道徳の特徴として、(1)家族による自己完結的な家の管理と主体的自助努力を本質とする点(2)孝行の実践を通して愛敬の情が形成される、(3)政策的な意図から形成された要素もあることを指摘した。
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Research Products
(1 results)